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コロナ陰性の電子証明 国内では慎重論も

 新型コロナウイルスに関する電子証明は「ワクチンパスポート」とも呼ばれる。ワクチン接種やPCR検査結果などの情報がスマートフォンのアプリで提示できれば、人の往来や経済活動がより円滑に再開できると期待され、航空会社などは導入に積極的だ。だが規格はバラバラで、差別を助長する懸念もある。

 全日空は、電子証明アプリが旅客の渡航ハードルを下げるとみて、今後も実験を通じた実用化に協力する考え。オンライン予約の際に、検査結果やワクチン接種履歴の電子証明を提示することで手続きが済むようにできる仕組みも視野に入れる。日本航空も実験など実用化に協力する予定だ。

 ただ、コモンパスと同様の各国共通の電子証明アプリは、国際航空運送協会(IATA)が開発する「トラベルパス」など複数あり、旅客の混乱を招く可能性もある。全日空はトラベルパスの実験も6月末までに実施予定で、日航も実験を検討している。

 各国・地域でも、電子証明の個人への発行と提示を義務付ける動きが広がっている。

 イスラエルでは、ワクチン接種完了や感染後に完治したことを証明する「グリーン・パス」が導入され、スポーツジムやホテルで提示が求められる。接種証明は2回目のワクチンを接種した週から有効で、期限は6カ月間だ。

 米ニューヨーク州のクオモ知事は26日、新型コロナの陰性を証明するスマートフォンアプリ「エクセルシオールパス」の利用を始めると発表した。アプリは米IBMとの共同開発で、マディソン・スクエア・ガーデンなどの大型イベント会場が活用を表明している。

 中国政府は3月、「国際旅行健康証明」を導入する考えを表明。既に中国市民の間では利用可能となっている。PCR検査結果やワクチン接種などの情報をQRコードを通じて確認できる電子証明と、印字した紙の2種類があるという。

 欧州連合(EU)は3月、加盟国の市民らが新型コロナの陰性を証明できる「デジタルグリーン証明書」の導入を提案。域内を安全で自由に移動する環境を整備する狙いだ。

 一方、日本国内では、ワクチン接種者に接種済み証が紙で手交されるが、基本的に特定の場所で提示を義務付ける対応は取っていない。政府関係者は「国内外の移動で接種記録を求めれば、ワクチン接種のスケジュールに混乱を起こしかねない」と指摘。差別につながるリスクもあり「軽々に判断できない」と導入に慎重な姿勢を示している。(大坪玲央、岡田美月)

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