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ソニー・初代CFO、伊庭保氏に聞く 「創業者のDNAを継承し、種まきを」 (2/2ページ)

  --吉田憲一郎社長は創業者の価値観を取り入れた企業理念を策定した

 「グループが目指すべき方向性を示す上で、井深さんや盛田さんに回帰することは正しい。ただ、(吉田氏が掲げた企業理念は)『世の中にないものをやる』『自由闊達にして愉快なる工場』などに触れられていない。そこが残念だ。2人の創業者のDNAを継承し、世の中にないものをやる会社になってほしい」

 --新規事業を育てていくには何が必要か

 「稼ぎ頭となったCMOSイメージセンサーは岩間さんが井深さんの反対を押し切って、1970年代に源流となるCCD(電荷結合素子)の開発を始めた。本人は『20世紀中の回収は難しい』と言い、90年代にCMOSに転換し、今、大きな花を咲かせている。事業の柱に育てるには、経営者は長期的な視点を持たないといけない」

 --イノベーションを生み出すのに必要なものとは

 「今はアップルにお株を奪われたが、昔は世の中にない製品を生み出し、自分たちが新しい文化を作るという気概を持った技術者が多かった。プレイステーションは3DのCG画像をゲームに取り込んだ久夛良木(健、元副社長)さんと音楽業界に精通する丸山(茂雄、ソニー・ミュージックエンタテインメント元社長)さんが組み、新たな市場を開拓した。プレステは社内の反対があったが、大賀(典雄、元社長)さんがけしかけて、任天堂を見返した。経営者が技術者に新しいことを挑戦させる土壌を作ってあげることも大事だ」

 --今後の経営課題は

 「今の事業ポートフォリオだけで、いつまでもうまくはいかないので、種まきをしないといけない。事業の選択と集中で経済合理性を重視し、独自に研究開発してきたディスプレーや有機EL、電池事業を手放した。昔のように辛抱していれば、先の楽しみがあったはずだ」

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