働き方 新時代

テレワーク拡大も定着不透明 孤独感払拭や連帯感醸成など課題

 新型コロナウイルス感染拡大により、在宅勤務などのテレワークが急速に広がった。いつでも、どこででも働くことが可能となり、転勤制度や人事制度を大幅に見直す企業が出てきた。一方、コミュニケーション不足や男性の家事・育児参加が進まない問題も指摘され、働き方が根本的に変わるかどうかは未知数だ。

 「お母さんに呼ばれたから、ちょっと席を外すね」。高知市の一戸建て住宅の台所。尾崎香織さん(42)は、イヤホンを外し立ち上がった。パソコン越しの相手は、約600キロ離れた情報サービス会社ネクスウェイ(東京)の同僚。要介護状態の母親(84)と故郷に戻り、社内の遠隔地勤務制度が始まった1月から仕事を続ける。

 仕事か介護か

 最も重い要介護度5だが、週の半分はデイサービスを利用せず自分で介護する。隣に座る母親に食事や水を取らせたり運動させたりしながら午前9時から午後7時ごろまで働く。「作業は変わらないけど、精神的には楽になった」とほほ笑む。

 仕事は移住前と同じ提案営業や派遣社員への指導を担う部署のチームリーダー。日中は同僚とビデオ会議ツールをつないだままにし、何かあれば気軽に声を掛け合う。

 移住のきっかけは昨春の緊急事態宣言。同社は全社員を原則在宅勤務としたが、東京の1DKで24時間母親と過ごす生活は限界に。感染不安とストレスで「仕事を辞めるか介護を諦めるかどちらかだった」と振り返る。

 コロナ禍で取引先とはオンラインの商談に移行。どこで働いても同じため「感染リスクが低く、親戚も多い高知で働きたい」と上司に相談した。前例はなかったが「出社時と同じように仕事ができるのならば」と、制度の導入が決まった。

 担当者を置かない営業方針など同僚の協力もあり、仕事に支障はない。ただ、感染収束後「出社する人が多くなったときに出勤者と同じような成果が出せるか。不安はある」と打ち明ける。

 同社では全員がテレワークだったときにはビデオ会議がうまくいった。しかし出勤者が増え、職場でちょっとした打ち合わせや雑談が生じると、テレワークをする人との間で情報格差も発生した。

 松森正彦社長(52)は「コロナ後は出社やテレワークといった異なる働き方が併存しても、円滑に仕事ができる仕組みづくりを目指す」と話す。

 チャットで気遣い

 兵庫県西宮市の川瀬佑治さん(27)は、大学卒業後にプロバスケットボールチームの職員や災害支援のスタッフとして計4年間勤務。だがコロナ禍を機に、テレワーク中心の自営業へ働き方を百八十度変えた。

 働きづめの生活だったが、今は午前9時から午後6時まで。同居の女性(21)や愛猫と過ごす時間も増え、「彼女が転勤になっても僕がついていけばいい」と身軽だ。

 昨秋から企業の経理などを代行するニット(東京)と委託契約を結ぶ。同社は面接から研修、業務まで全てオンラインで、業務ごとにチームをつくって役割を分担する。川瀬さんは、全体の作業工程を管理し顧客との調整も担う。

 チーム内のやりとりは主にチャットツールを使う。ただ文字だけの“会話”に適応できず、味気なさを感じる人もいる。社内調査では同社で働く3人に2人は働き方に不安を抱え、完全には改善できていない。

 コミュニケーション不足からくる孤独感の払拭や連帯感の醸成はチーム運営の悩みだ。チャットには意識的に絵文字や砕けた口調も織り交ぜる。「冷たい印象を与えないよう、気を使わないと。仲間ですから」。照れくさそうに、パソコンのキーボードを押した。

【用語解説】テレワーク

 パソコンやタブレット端末を活用して、時間や場所を縛られずに働く勤務形態。英語の「tele(テレ)」(遠く)と「work(ワーク)」(働く)を組み合わせた造語で、政府は(1)自宅近くの施設などで働く「サテライトオフィス勤務」(2)自宅で働く「在宅勤務」(3)交通機関やカフェなど移動先で働く「モバイル勤務」-に分類している。通勤時間の削減やワークライフバランスの充実といったメリットがある一方、長時間勤務や孤独感といったデメリットも指摘されている。

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