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5G開始1年、近未来へ手探り 都市部エリア限定・コロナ逆風で普及に苦戦

 携帯電話大手3社が第5世代(5G)移動通信システムの商用サービスを始めて1年が経過した。各社とも、圧倒的な通信速度を生かした“近未来のサービス”をアピール。携帯利用者に5G対応端末への移行を促すが、通信エリアはまだ都市部に限られ、普及の動きは鈍い。新型コロナウイルスも逆風で、手探りの中、2年目の今年が正念場となりそうだ。

 観光を疑似体験

 3月下旬、JR東京駅に登場した「未来の物産展」。ゴーグル型の端末を装着すると、目の前の仮想空間に青森県のねぶた祭や弘前城の桜といった光景が広がる。観光を疑似体験しながら特産品やご当地グルメが購入できる新たな物産展だ。

 企画したのはJR東日本やNTTドコモなど。5Gの高速通信を活用し、遠隔地にいる販売員が仮想空間内で接客することもできる。

 5Gではスポーツや音楽ライブを好きな視点から見たり、最前列にいるような臨場感を味わったりするなどの楽しみ方も可能だ。ドコモは卓球Tリーグの試合で5Gを使った映像伝送を実施。打球の速度や回転数をリアルタイムで数値化し、選手の動きに重ねて映し出す技術も活用し「新たな観戦体験」(井伊基之社長)を実現した。

 KDDIの高橋誠社長は「5Gの体験価値を上げるのは映像だ。一度経験すれば、元には戻れない」と強調する。携帯大手3社は昨年3月25~27日に相次いで5Gのサービスを開始。次世代の映像体験を軸に、普及に力を入れてきた。

 ただ総務省によると、昨年12月末時点の5Gの契約件数は545万件。従来の第4世代(4G)の約1億5000万件に遠く及ばない。この1年で基地局整備は進んだものの、利用エリアがまだ都市部にとどまっていることが背景にある。

 コロナで販売店への客足が鈍り、起爆剤と見込んだ東京五輪・パラリンピックが延期となったことも誤算だった。10月に発売された5G対応の新型iPhone(アイフォーン)は追い風となったが、逆境を覆す決定打にはなっていない。

 料金値下げの波紋

 普及の鍵を握るエリア拡大に向け、KDDIとソフトバンクは来年3月までに人口カバー率を90%に引き上げる計画。ソフトバンクの榛葉淳副社長は今年が「全国津々浦々で使える“5G元年”になる」と意気込む。

 ただ基地局整備などには毎年数千億円規模の巨額投資が必要で、菅政権が看板政策として打ち出した携帯電話料金引き下げが、収益を圧迫して投資余力を奪うのではないかと波紋を広げている。

 一連の値下げでは5G対応プランの料金も下がっており、4Gから乗り換えが進む可能性もある。ただ一方で、通信業界に詳しいMM総研の横田英明研究部長は「エリア拡大で後れを取れば、今後10年にも影響する。投資を緩めるわけにはいかない」と指摘。各社が計画通りに投資を継続できるかどうかが課題となる。

【用語解説】5G 第5世代を意味する英語「5th Generation」の略で「ファイブジー」と読む。携帯電話などに使われる通信方式の規格で、第5世代移動通信システムとも呼ばれる。通信規格は1980年代に第1世代が広がって以降、技術の向上に伴い約10年ごとに新規格へ入れ替わってきた。5代目となる5Gは高速大容量、多数同時接続などが特長。スマートフォンの動画配信など個人利用のほかに、自動運転や遠隔医療といった産業分野での活用も期待されている。

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