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下請け脱却へ布看板、除菌フィルム開発

 リディアワークス代表取締役・小林史人

 リディアワークスは2010年に設立した従業員12人の中小企業だ。空間ディスプレー印刷製造、機能性フィルム企画製造を事業とし、14年に誰でもシワなくきれいに張れて環境にも優しい内照式の布看板「ルーファス」(日本のほか主要国で特許取得)を開発した。また20年には、新型コロナウイルス感染防止に貢献しようと、銅の粒子を練り込んだ半透明の除菌フィルム「キルウイルス」を開発した。布看板「ルーファス」は2019グッドデザイン賞のベスト100に選出され、20年11月には中小企業庁から「2020年はばたく中小企業・小規模事業者300社」の選定を受けた。

 ただ、必ずしも順風満帆だったわけではない。筆者は写真業界で約3年間、特殊フィルム・印刷に従事した後、20代半ばで看板業を営む実家に戻ったものの、下請け・孫請けのような格好だった。他の会社ができない商品・サービスで受注を得ていたので、これに特化して下請けから脱却しようと設立したのがリディアワークスだ。「魅了する環境をアイデアで実現する」というビジョンを掲げてスタートした。

 初めは、自分たちで設置できるポータブルディスプレーツールを手掛けた。さらに良いものをと思い、開発したのが布看板「ルーファス」だ。布看板については、世界中で使われているものの、日本では普及していなかった。印刷した布をアルミ枠にはめ込むときに、しわが寄ったり、たるんだりして、うまく張れなかったのが原因だった。そこで、ラバーとアルミ枠に凹凸を付けることでかみ合うようにし、取り付け時に展張できる技術を開発した。「ルーファス」は省電力な上、アクリル板からの代替が進めばワンウェイ(使い捨て)プラスチック排出抑制に大きく貢献できる。

 一方、除菌フィルム「キルウイルス」は、インフルエンザウイルスを15分で99%減少させるほか、宮崎大学の実証試験で新型コロナウイルスを1時間に83.8%減少させることが確認されている。これまでに病院の診察机や受付カウンター、銀行受付カウンターなどで使われている。近くスマートフォンやタブレットの液晶を保護する除菌フィルムも発売予定だ。

 中小企業が下請けから脱却するのは容易ではない。当社も道半ばだ。とはいえ、下請け脱却への苦悩や、商品開発のひらめきと過程、中小企業ならではの社会貢献を記すことで、コロナ禍で苦境にある中小企業に少しでも勇気とヒントを提供し、ともに発展していくことができれば幸いに思う。

【プロフィル】小林史人

 こばやし・ふみと 本所高卒。山崎組、京王運輸、プロラボを経て2003年に家業のコバヤシ看板入社。10年リディアワークスを設立。誰でも上手に張れて環境にも優しい布看板「ルーファス」を開発し2019グッドデザイン賞ベスト100、2020年はばたく中小企業300社(経産省)選定。20年には除菌フィルム「キルウイルス」を開発し販売会社ウイルスケア設立。42歳。東京都出身。

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