テクノロジー

韓国にも敗れた「日の丸半導体」が、世界一に返り咲く意外なシナリオ (1/2ページ)

 30年前、日本の半導体は世界シェア51%で世界一だった。しかし現在の市場シェアは6%にまで低下している。KDDI総合研究所リサーチフェローの小林雅一さんは「86年の日米半導体協定で、韓国企業が伸長し、日本企業は存在感を失った。しかしスパコン富岳が世界一になったように、ハイテク・ジャパンには復活の兆しがある」という--。※本稿は、小林雅一『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるのか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

ハイテク分野でも始まった米中の覇権争い

 近年のトランプ政権下で始まった米中貿易戦争は、やがて中国のIT企業「ファーウェイ」や動画サービス「ティックトック」などをめぐるハイテク覇権争いへと発展し、2021年に発足したバイデン政権へと引き継がれた。

 それは両国の狭間で身を屈めてチャンスを窺う巨大経済圏EUや日本を巻き込み、国際政治と先端技術が複雑に絡み合う「テクノ・ポリティクス」時代の幕開けを告げている。

 これを象徴するのがスーパーコンピュータの開発競争だ。スパコンが次なる「エクサ・スケール(1000ペタ級)」に向けて世代交代の時期を迎える中、「富岳の世界ナンバーワンは短期間に終わる」との見通しも当初囁かれたが、間もなく相反する見方も出てきた。

 米中のハイテク覇権争いの影響などから、両国による次世代スパコンの開発プロジェクトが滞る気配があるのだ。これらエクサ級のスパコンが実現されない限り、優に440ペタ以上の性能を誇る富岳の世界王座は当面揺るがない。

日米ハイテク覇権争いとの類似点と相違点

 スパコンや半導体技術をめぐる米中間の激しい争いは、1980~90年代における日米間のハイテク覇権争いをある意味で彷彿させる。

 当時、世界市場を席巻した便利で廉価な家電商品など日本のエレクトロニクス産業に対抗するため、米国政府はそのベースとなる日本の半導体産業を弱体化する戦略をとった。それが端的に現れたのが86年の日米半導体協定であり、(もちろんこれだけが原因ではないが)これらを契機に日本の半導体、ひいてはエレクトロニクス産業は衰退の道を辿った。

 ちょっと言葉は悪いが、当時、そこから「漁夫の利」を得たのはサムスン電子など韓国を代表する巨大メーカーであった。

 それから30年以上の歳月が流れた今日、米国政府は今度はファーウェイやティックトックなど進境著しい中国のIT企業をハイテク覇権争いのターゲットに選んだ。今回もそのカギを握るのは、スパコンやAI、5GなどIT産業のベースとなる先進の半導体技術である。

 かつての日米半導体協定では、「日本の半導体市場を外国の半導体メーカーに開放すること」を日本側に義務付け、ついには日本メーカーが顧客企業に韓国製品を推奨するなど常識ではあり得ないような事態へとつながった。

 筆者は国際政治が専門ではないが、それでも素人なりにあえて言わせてもらえば、要するに米国による「核の傘」など安全保障上の同盟関係にある日本は結局、理不尽な協定でも受け入れざるを得ない、という読みが米国政府側にあったのではないか。

 これに対し、21世紀の今日、米国がハイテク覇権争いの相手とする中国は同盟国ではなく、ロシアなども含めた対立陣営に位置付けられる。これには80年代の日本に対してとったようなやり方は通用しない。

 しかも中国はAIや5G、さらにはスパコンや宇宙開発などさまざまな分野で米国に接近、ないしは追い着くほどの技術力を蓄えてきている。が、それらのベースとなる半導体、特にその製造技術では少なくとも4~5年、米国や台湾、日本などに遅れていると見られる。

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