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半導体増産が脱炭素を阻む 巨額投資の代償、技術進歩で膨らむ資源消費

 洗濯機から人工知能(AI)まで生活のあらゆる場面でデジタル化が進むにつれ、半導体需要は急増する一方だ。世界的な半導体不足を背景に各国・地域の政府の後押しもあり、巨額な投資も進む。だが、そこにはコストが伴う。半導体生産には多大な資源消費を伴うという現実がある。

 多大な電力や水使用

 台湾南部のサイエンスパークでは昼夜を問わずトラックが到着し、コンクリートを注ぎ込む。世界最先端の半導体工場の建設現場だ。台湾積体電路製造(TSMC)によるこの工場建設コストは200億ドル(約2兆1900億円)と見積もられ、米電気自動車(EV)メーカーのテスラがベルリン近郊に予定するギガファクトリーの約3倍に当たる。二酸化炭素(CO2)排出量もこれに見合って大きくなる。

 2020年10月の論文で、ハーバード大学のウディト・グプタ氏が率いる研究者らはTSMCとインテル、アップルなどの企業から公開されている持続可能性リポートを利用し、あらゆるものがコンピューター化するにつれ「環境への影響も大きくなる」ことを示した。

 それによると、情報およびコンピューター技術は30年までに世界のエネルギー需要の最大20%を占める見通しで、システム運用よりもハードウエアによる消費が大きいという。また、「半導体生産がCO2排出量の大部分を占める」とも研究者らは結論付けた。

 これはあまり知られておらず、より最先端の半導体製造を推し進める各国・地域の政府にとっては不都合な事実だろう。(【韓国にも敗れた】「日の丸半導体」が、世界一に返り咲く意外なシナリオ)

 逆説的だが、半導体自体は業界の技術進歩のおかげで効率性が一段と増してパワフルになり、寿命を迎えるまでのエネルギー消費も減った。しかし、多数のトランジスタを載せる半導体チップはますます微細化。シリコンウエハーは回路焼き付けなどさまざまな自動化工程を経て最終製品に仕上がるが、そこでは大量の超純水も洗浄に欠かせない。半導体が進化するごとに、その生産にはより多くの電力と水が使われ、温暖化ガスが発生することになる。

 その結果、最先端を行く半導体メーカーは自動車メーカーよりも環境に優しくない状況だ。例えば19年には、米インテルの工場が使った水は米フォード・モーターの3倍強で排出ガスは2倍余りだったと企業の開示資料が示している。

 「一般的な傾向は、全ての半導体が一段と複雑になるにつれ、エネルギー消費が増加し水使用量も増えるということだ」と、ベルギーの研究機関IMECでシニアリサーチャーを務めるマリー・ガルシア・バードン氏が指摘した。

 TSMCの水の消費量は過去10年間でほぼ5倍に増加し、19年はオリンピックの競泳用プールを7万9000回満杯にできる量だった。さらに劇的なのが年間電力消費量で、環境保護団体グリーンピースの見積もりによると、台湾全体の使用量の4.8%を占める。この比率は回路線幅を5ナノメートル(ナノは10億分の1)から3ナノメートルに狭める最新工場が操業開始となれば7.2%に上昇するという。

 再エネ強化アピール

 TSMCは米アップルの主要サプライヤーだ。アップルは30年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを目標に掲げ、サプライチェーン(供給網)全体に変化をもたらしている。TSMCは50年までに再生可能エネルギー利用を100%に引き上げると約束し、昨年7月には台湾の脱炭素に向けた一環でデンマークのオーステッドが台湾海峡に建設する920メガワットの洋上風力発電所の全出力を購入する契約に署名した。

 製品利用時だけでなく「製造プロセスにおいてもユニット当たりのエネルギーおよび資源の消費と汚染を減らすため、より高度かつ効率的な技術の開発を続ける」との発表文をTSMCは出し、再エネの利用を増やし温室効果ガス排出を削減する取り組みを続けると付け加えた。

 ESG(環境・社会・ガバナンス)の概念の登場で半導体メーカーは対応を迫られていると指摘するのはブルームバーグNEFのアナリスト、カイル・ハリソン氏だ。多くのメーカーにとって、「ESGの報告と脱炭素をもっと深刻に受け止め始めなければ、収入源のかなりの部分を失いかねないリスクがある」としている。(ブルームバーグ Alan Crawford、Ian King)

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