フジテレビ商品研究所 これは優れモノ

富士通ゼネラル エアコン「ノクリア」Zシリーズ

 熱交換器を加熱除菌 常に快適空間

 新型コロナウイルス禍を受けて自宅で過ごす時間が大幅に増えた人も多い。こまめな換気は欠かせないが、これからの梅雨や夏の季節にはエアコンの出番となる。今回の「これは優れモノ」は業界初の機能で清潔な空気をつくり出すエアコンを取材した。

 技術者の常識を覆す

 「エアコン技術者の常識を覆す機能を開発しました」と話すのは、富士通ゼネラル研究所の奥野大樹さん(37)。大学では、DNAや細胞を分析するバイオセンシング技術を学び、カビなどの微生物を検出する研究にも従事してきたキャリアを持つ。

 エアコンの内部は、部屋のホコリやチリで汚れやすく、結露が原因でカビが発生しやすい。そこで、メーカー各社は、エアコン自らが、その内部を清潔に保つ機能開発に取り組んだ。

 富士通ゼネラルは、2003年に家庭用としては世界初のフィルター自動おそうじ機能搭載エアコン「ノクリア」を発売した。消費者の多くが面倒だと感じていたフィルター掃除を機械が自動で行うというもので、多くの支持を得た。ライバル各社も同様の機能を搭載したことで、現在ではスタンダードな機能となった。

 エアコンの仕組みは冷房の場合、室内の空気から熱を奪い、外に排出することで部屋を涼しくしている。具体的には、エアコンは室内機と室外機で一対となっており、それぞれに熱を取り込んだり排出したりする熱交換器が入っている。この2つは、冷媒という熱を運ぶ性質を持つガスが充填(じゅうてん)されたパイプにより結ばれている。このガスが室内機で取り込んだ空気から熱を奪い、室外機を通じてその熱を排出している。熱を奪われた涼しい空気が室内に流されることで、部屋の温度が下がるという仕組みだ。

 室内機から冷たい空気を送り出す際に、熱交換器に結露が生じる。この水分は、ドレインパイプを通して屋外に排出されるが、一部が残留し、雑菌やカビ菌の温床となっていた。

 熱交換器はアルミフィンを目の細かい櫛(くし)のように並べているため、その隙間に付着した水分を完全に除去することは難しかったのだ。

 「そこで熱交換器自体を温め、残留した水分を加熱することでカビ菌を除去する方法を思いついた」(奥野さん)。カビ菌は、高温の乾燥した環境では生き残れるが、熱いお湯の中では生きられないことから考え付いたことだった。

 人の不在時に自動対応

 残留した水分をお湯にするには、熱交換器の温度を55度以上に加熱し10分間維持することが必要だった。「ところが、熱交換器をその温度まで上げることは、エアコン技術者の間では非常識なことでした」と話すのは、奥野さんと同じチームで新商品の企画開発に携わった徳田哲(さとる)さん。熱交換器を高温にし過ぎると、コンプレッサーなど他の機器に悪影響を与えると考えられていたからだ。

 しかし、エアコン内部を清潔にして、清涼な空気を望む消費者の声を背景に、2017年に業界初の加熱除菌により熱交換器を除菌する機能を搭載した製品の開発に成功し、市場に出した。さらに、この4月からは2つの人工知能(AI)によって、使う人の生活リズムを学習し、不在時に自動で熱交換器加熱除菌を行う「ノクリア」Zシリーズを発売した。「AIを使うことで、常に快適な空間を実現する自信作です」と奥野さんはほほ笑んだ。

 ≪interview 担当者に聞く≫

 富士通ゼネラル 家庭用空調機開発部 第一商品開発部シニアマネージャー・徳田哲氏

 富士通ゼネラル研究所・奥野大樹氏

 AI連動、冷風・温風を事前に吹き分け

 --固定概念を覆した機能だ

 エアコンの基幹部品である熱交換器を冷房運転後に55度以上という高温で10分間も加熱するということは、エアコン技術者には思いもつかないことだった。他の部品への影響を最小限に抑える独自の制御方法を開発し、他部品への問題を解決した。また、使用中にエアコン内部をその温度にすると、暖かい空気が室内に流れることになる。室温上昇を最小限に抑える独自制御も盛り込んだが、梅雨や夏の時期に室温を少し上昇させてしまう恐れがあった。そのため、初代の熱交換器加熱除菌機能搭載機では、運転を終了した後、お出かけ時などにお客さまの任意で加熱除菌していただくという仕組みにした。

 --開発に要した期間などは

 エアコン内部を清潔にして清涼な空気の流れを作ることを長らく研究のテーマにしていた。2015年からエアコン内部を除菌するためのさまざまな技術の検討を開始し、熱交換器加熱除菌機能については16年頃から本格的に開発に取り掛かった。発売までは約2年ほどの時間を要した。カビの発生を防ぎ、除去する方法を探るため、技術者、研究者による混成チームで開発に当たった。当時、カビが人体に及ぼす悪影響が話題になっていて、消費者に安心感を与えるためにも、開発に注力した。

 --4月から発売した商品の特長は

 エアコン本体に搭載された人工知能(AI)とクラウド上にあるAIが連動するため、高精度な学習機能を持つ。日差しや降雪などで室内の温度ムラの発生しやすい時間や場所を予測し、事前に冷風や温風を吹き分ける。また、センサーとAIによって人の不在を感知・学習し、自動で熱交換器を加熱除菌する。プラズマ空清で、空気中の花粉やカビ、ウイルスなどを除去する。さらに、最近の猛暑に対応して、外気温が50度になる過酷な環境でも運転できるよう設計。室内機のデザインも、素焼きの陶器をイメージして加工しており、インテリアに調和する上質な風合いとした。エアコンの圧迫感を軽減することにもこだわった。

 ■フジテレビ商品研究所

 「企業」「マスコミ」「消費者」をつなぐ専門家集団として1985年に誕生した「エフシージー総合研究所」内に設けられた研究機関。「生活科学」「美容・健康・料理」「IPM(総合的有害生物管理)」の各研究室で暮らしに密着したテーマについて研究している。

 https://www.fcg-r.co.jp/lab/

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