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課題解決のアイデア実証し特許取得

 リディアワークス代表取締役・小林史人

 中小企業の特許出願は悩ましい決断だ。コストがかかる。技術公開により、他社にヒントを与えてしまうかもしれない。特許権を取得したとして、その権利が守られるかどうか分からない。当社は2014年に開発した内照式の布看板「ルーファス」で、特許を取得した。その経緯を明らかにするので、参考にしてもらえればと思う。

 「ルーファス」の展張という単純な手法は、あらゆる平面に使える。壁面や、軽量の膜天井、光壁、発光する光膜天井としての活用が想定できた。きれいに張るためにはどのような構造が良いかを考え、さまざまな引っ張る構造を調べて観察することで展張構造のアイデアを固めていった。大きな市場性を見込み、構造を模倣されないように特許を出願することにした。

 まず始めたのが現状の把握だ。欧米や中国の類似製品を検索し、良さそうなものは取り寄せた。そこで見えてきたのは、世界中で同じ課題を抱えていたことだった。欧州の街中に設置されていた布看板の中には寸法足らずで枠に収まらず、中の照明が見えているものがあった。ドイツの展示会では巨大な展張膜が展示ブースに設営されており、とても美しかった。しかし、フランスの布生地メーカーの営業マンに聞いたら、1週間程度の設営期間中に何度か工場に持ち帰って加工をやり直し、シワやたるみを修正していた。

 次に布膜を簡単に展張する構造のアイデアを練った。展示会ではコードなどを束ねるときに使うロックタイ(結束帯)を活用している。巨大な膜はパイプやボルトを活用して展張する。いろいろと観察する中で、ロックタイのギアのような、引っ張るだけでカチッと留まる構造に着目した。突起をつけてかみ合うようにすれば張り具合を調節できるのではないかと思った。構想していた断面を原寸大でいくつか作り、ゴムをカッターで切り出して試していった。型を使った本番試作で、思いっきり引っ張っても取れず、キッカケを作って引っ張るとスルスル取れる理想的な構造が仕上がった。

 課題をリサーチし仮説を立て、PDCA(計画、実行、評価、改善)を回して検証していく。それを繰り返し行うことで完成度を高めた。簡単に模倣できそうな構造だった。特許を取得したほうが良いのかが分からず、特許事務所に相談したら、「特許の費用を回収できるのであれば取得したほうが良い」という答えが返ってきた。人に優しく環境にも良い布看板「ルーファス」はこうして発売され、特許を取得した。

【プロフィル】小林史人

 こばやし・ふみと 本所高卒。山崎組、京王運輸、プロラボを経て2003年に家業のコバヤシ看板入社。10年リディアワークスを設立。誰でも上手に張れて環境にも優しい布看板「ルーファス」を開発し2019グッドデザイン賞ベスト100、2020年はばたく中小企業300社(経産省)選定。20年には除菌フィルム「キルウイルス」を開発し販売会社ウイルスケア設立。42歳。東京都出身。

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