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医療ベンチャー「テラ」の株価乱高下 コロナ薬迷走、役員対立も

 がんの免疫療法の研究開発を手掛ける東大発の医療ベンチャーで、ジャスダック上場「テラ」は、新型コロナウイルス感染症の治療薬開発事業を公表した昨春以降、株価が乱高下した。資金繰りをめぐって役員同士が対立するなど不安定な経営の末、3月には証券取引等監視委員会から調査を受けた。開発に携わった研究者からは、経営陣への批判の声が上がる。

 テラは2004年設立。東大医科学研究所で開発された免疫細胞を構成する成分の一つ「樹状細胞」を培養する技術を生かし、がん細胞だけを攻撃するワクチンの開発に取り組んできた。治験は現在、和歌山県立医科大などで続く。研究者の一人は「もし成功すれば、がん患者への大きな福音になる」と期待を寄せる。

 しかし、テラ関係者によると、経営面は長く不安定な状態が続いた。研究開発費を賄うための収入不足がネックとなり、資金調達は綱渡り。幹部が対立し、役員も頻繁に入れ替わった。

 そんな中、昨春に新たな役員が就任。この役員が社長を務める「CENEGENICS JAPAN」(セネ社)との提携事業として同4月、コロナ薬事業を発表した。その後はセネ、テラ両社がメキシコでの薬開発の進捗を次々に情報開示。テラ株はにわかに注目を集め、株価も当初の100円台から一時は2000円超に急騰した。

 一方で、コロナ薬事業の実現性や信憑性は、関係者の間で当初から懐疑的に見られていた。テラは昨秋「イダルゴ州で治験が薬事承認された」と発表したが、各国の治験状況を集めた国際的なデータベースには記載がない。樹状細胞開発に携わった医師も、テラの一連の発表について「本当にメキシコで治験が行われているとしたら、提示されるべきデータが示されないのはおかしい」と疑問視している。

 コロナ薬事業は結局、テラが昨年末に「現地の子会社をセネ社に譲渡する」と表明して事実上撤退した。セネ社は今年に入り、JR東京駅近くにあったオフィスも閉鎖し、事業そのものが立ち消えに。治験の信憑性もうやむやのままだ。

 3月30日の株主総会でも、コロナ薬事業について株主から疑問の声が上がったが、テラ側は「メキシコでの臨床試験はあり、データは取締役で共有してきた」と説明したもののデータは開示されなかったという。関係者は「疑惑を残したまま会社が上場し続けても、市場のためにならない」と憤る。

 樹状細胞開発に携わった医師は、コロナ薬をめぐって揺れたテラの姿勢に疑問を呈し、「がんの治験結果は世界中からニーズがあるはずなのに、大きく道を外してしまった」と残念がった。

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