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日本ガイシ 脱炭素とデジタルで車に頼らぬ成長

 日本ガイシ社長・小林茂さんに聞く

 --100年以上続く祖業の「がいし(送電線などにつける絶縁体)事業」を立て直した

 「苦節10年のリストラの歴史を経て、2021年度は黒字化できる見通しだ。再生可能エネルギーが増えたこともあって一定の物量は確保できる見込みで、収益維持のめどは立ってきた」

 --世界的な脱炭素化は蓄電池事業には追い風だ

 「実用化しているナトリウム硫黄(NAS)電池に加えて、新しいタイプの亜鉛二次電池も開発中だ。脱炭素化の流れの中で、不安定な再エネの電気を蓄える蓄電需要は伸びる。ただ、これまでは電池を売ることを考えても、機能を売ることは考えてこなかった。それでは相応の利益は得られない。これからは自分でリスクをとって蓄電ビジネスを展開するなど、モノ売りだけでなくコト売りもやっていく。ニーズはある。あとはビジネスを創造する勇気と見識があるかどうかだ」

 --デジタル関連事業も成長分野と位置づけている

 「半導体製造装置向けセラミックス製品や電子デバイス用基板などが育ってきた。5G(第5世代移動通信システム)などに対応した大型投資が実を結びつつあるが、2030年以降に向けて脱炭素関連を含めた研究開発体制を強化する。データとAI(人工知能)を組み合わせて開発期間も大幅に短縮する」

 --自動車電動化で主力の排ガス浄化製品など自動車関連事業の将来は厳しいとの見方もある

 「電気自動車の時代になるとの見方は多い。しかし、充電設備や脱炭素の電気を供給するインフラ整備には膨大なコストが必要だ。ハイブリッド車を含めてエンジンがなくなるかは疑問だが、50年までのビジョンでは脱炭素とデジタルで8割を稼ぎ、自動車に頼らない成長を示す。エンジンが残れば、さらに業績が上向く計画だ」

【プロフィル】小林茂 こばやし・しげる 慶大法卒。1983年日本ガイシ入社。2016年執行役員、18年常務執行役員、20年取締役専務執行役員を経て、21年4月から現職。東京都出身。

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