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“松山効果”に期待のゴルフ産業

 尚美学園大学教授・佐野慎輔

 もう10日もたったのに、まだ松山英樹選手のゴルフのメジャー、マスターズ制覇の余韻に浸っている。日本人初優勝、アジア初の快挙。新型コロナウイルス感染が再拡大し今夏の東京五輪・パラリンピック開催に反対の声が根強い中、競泳・池江璃花子選手の白血病からの復活とともに久しぶりに味わう明るい話題である。

 賞金ランク4位

 10年ほど前になるだろうか。松山選手がまだプロ入り前、トップアマチュアの阪田哲男さんに聞いた話を思い出した。

 「楽しみな存在が出てきました。彼ほどの体格なら海外に出ても欧米の選手と遜色ありません。大いに期待が持てます」

 今ほど体重はなく、ほっそりとしていたが、身長180センチは変わらない。1984年世界アマチュア・ゴルフチーム選手権個人、団体で頂点に立った人の目には大きな可能性が見えたのだろう。その恵まれた体格を生かし、多くの人の期待を実現させた松山選手の向上力、意志力、精進の日々は称賛しかない。

 優勝賞金207万ドル(約2億2400万円)、今年度の獲得賞金は374万1419ドルとなり、賞金ランク4位に浮上した。既に前年の獲得額366万5825ドルを超えており、今後どこまで獲得賞金、ランクを伸ばしていくか、ひとごとながら楽しみではある。

 クラブやウエア契約をしている住友ゴム工業やサングラスなど用具契約のオークリージャパン、またトヨタ自動車やロレックス、野村ホールディングスなど数社とCM契約。スポンサー収入は推定30億円ともいわれるが、今後さらなるオファーもあるに違いない。

 知人の広告代理店関係者によると、いまは海外で活躍するプロスポーツ選手への需要が高いという。テニスの大坂なおみ、錦織圭両選手に大リーグのカリフォルニア・エンゼルス大谷翔平選手、そして松山選手。NBA(米プロバスケットボール協会)ワシントン・ウィザーズの八村塁選手が4人に続く。

 女性プレーヤー増加

 高いレベルの舞台で、海外のトップ選手に伍(ご)して活躍する様子が繰り返しテレビで放映、インターネット動画でも目にできる。世界を身近に感じ、スポーツに打ち込む姿に共感する人は少なくない。

 そして松山選手の活躍に、より熱い視線を送るのは、日本のゴルフ関係者だ。6300万人とも6500万人ともいわれる世界のゴルフ人口の約45%が米国、日本は13%で世界2位。しかし日本生産性本部編「レジャー白書」によると、2001年に1300万人だった日本のゴルフ人口は06年1000万人を割り込み、16年には550万人まで落ち込んだ。17年に670万人と盛り返したが、19年は580万人に。市場規模も00年の1兆5010億円が10年には9650億円、19年は8540億円と冷え込んだ。

 長引く不況が若年層、中年層に影響。ゴルフ用品を高く感じ、ゴルフ場へのアクセスに負担を感じる人も多く、ゴルフ離れに拍車がかかった。

 ただ、このコロナ禍で、自然に触れながらプレーするスタイルに若い女性たちが反応。ゴルフを始める女性が増えているという。裾野を広げ、じり貧状態からの脱出は急務。松山選手のさらなる活躍に、ゴルフ産業の未来もかかっている。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年富山県高岡市生まれ。早大卒。サンケイスポーツ代表、産経新聞編集局次長兼運動部長などを経て産経新聞客員論説委員。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大および立教大兼任講師などを務める。専門はスポーツメディア論、スポーツ政策とスポーツ史。著書に『嘉納治五郎』『中村裕』『スポーツと地方創生』(共著)など多数。

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