主張

電力カルテル容疑 安定供給と競争の両立を

 大手電力会社が事業者向けの電力販売をめぐって、互いの営業活動を制限するカルテルを結んでいた疑いがあるとして、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査した。

 公取委がカルテル容疑で大手電力に立ち入るのは初めてである。電力・ガス小売りは段階的に自由化が進み、今は家庭向けを含めて全面自由化された。電力会社の地域独占は廃止されたが、相互不可侵を事実上続けていた疑いだ。

 自由化は事業者同士の健全な競争を通じ、価格引き下げとサービスの多様化を促すのが目的だ。自由化市場で競争を制限する行為は到底許されない。徹底した調査で健全な競争環境を確保する必要がある。

 立ち入り検査を受けたのは、中部電力とその販売子会社の中部電力ミライズ、関西電力、中国電力の電力大手だ。これに加え、中部電力と家庭向け電力とガスの価格維持のカルテルを結んだ疑いで東邦ガスにも検査が入った。

 電力・ガス市場は、自由化が進む中で競争が激化している。特に電力市場には通信や石油などの異業種から新規参入が相次ぎ、大手電力よりも安い価格で攻勢をかけており、現在は新電力が2割程度のシェアを獲得している。

 こうした競争激化に伴い、大手電力やガス会社は顧客基盤を失いつつあり、危機感が強まっている。その中で、事業者向けの電力販売や家庭向けのガス販売でカルテルを結んで競争を制限していた疑いが浮上した。

 不当に競争を損なう取引制限は、利用者の利便性を失わせる。電力・ガスの自由化に逆行するものだけに、実態の解明が欠かせない。新電力との競争が激化する中で大手同士だけでカルテルを結ぶ理由も調べてほしい。

 一方で、経済や生活を支える基盤である電力・ガスは、安定供給の確保が大前提だ。競争が行き過ぎて過度な安売り競争などが広がれば、事業者は継続的な設備投資ができず、最終的に安定供給も損なわれる恐れがある。

 このような事態を防ぐには、安定供給を維持するため、基盤整備を促すような政策的な支援も検討が必要である。電力・ガスの自由化の制度設計をめぐっては、そうしたバランスを取ることを忘れてはならない。

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