高論卓説

マスク、リモート浸透で指導力に変化今日の環境に必要な構成スキル

 マスク着用が常態化し、リモート会議が一般化するなど、この1年で、コミュニケーション環境が大きく変わった。従来と同じスキルを発揮していても、環境が異なる中、効果が低下してしまうことがよくある。環境変化に応じて、どのスキルを、どのように発揮するか、調整をしていく必要がある。

 私は今日のコミュニケーション環境を、以下の4つに区分して捉えている。(1)対面でマスクなしの場合(2)対面でマスクありの場合(3)リモートでカメラオン・マイクオンの場合(4)リモートでカメラオフ・マイクオンの場合-などだ。

 (1)は制約がない場合だが、(2)はマスクによって、顔の下半分の表現スキルを発揮できず、声の表現スキルが制約を受ける状況に陥る。この場合は、顔の上半分のスキルへの依存度が高まる。アイコンタクトの秒数や、アイコンタクトを外す方向をコントロールするスキルだ。

 例えば、相手を見つめ続ける秒数が長過ぎると圧迫感を与えやすい一方、短過ぎると相手を引き付けづらい。アイコンタクトを上に外していると思い出しながら話していると思われ、斜め上だと他のことに気を取られていると誤解されやすく、斜め下だと自信がないと受け取られやすい。

 初対面だと2、3秒、慣れ親しんだ相手だと5、6秒で、アイコンタクトを下に外すと相手を巻き込みやすい。

 (3)のリモートの場合は、体全体の動きによる表現力を発揮しづらい一方、上半身、特に顔の表情や声の表現スキルへの依存度が高まる。(4)のカメラなしの場合は、電話と同じで声の表現スキルのウエイトが格段に高まる。これらの区分の順に、表現スキルが発揮しづらくなるが、半面、発揮効果が高まるのが、構成スキルだ。表現スキルの発揮余地が限られる分、話の構成によって相手の理解を促すことの重要度が増す。

 構成スキルは、説明する際の構成と、返答する際の構成に分解して考えると分かりやすい。説明の構成は、経過をたどって話す経過話法、話したい内容を分解してポイントを絞って話す分解話法、結論から逆算する逆算話法、現在の実施事項の延長線上で語る積上話法、重要な点、緊急な点、貢献できる点に着目する重要話法、緊急話法、貢献話法の7つにモデル化できる。

 返答話法は、相手の話の範囲内で返答する反復話法、要約話法、自分の知識や具体例や経験を追加して返答する詳細話法、例示話法、経験話法、仮定を置いたり論理構造を変えて展開する示唆話法、転換話法の、これも7つの話法に分かれる。

 テーマや時間によっても、的確な説明話法や返答話法は異なるが、相手が理解しやすい説明の仕方や、相手が話しやすい返答の仕方のクセがあることが多いので、それが分かれば、相手の理解をうながす説明や、相手との対話を深められる返答の仕方を繰り出しやすくなる。

 説明話法を繰り出す前に、質問を組み込む構成をとると、さらに相手の巻き込みを加速できる。「こうしろ」「ああしろ」と指示、命令の説明をする前に、「やってみてどうだったか」「うまくいかなかった点は何か」と質問をする。「これに合意してくれ」「あれに従ってくれ」と合意を迫る前に、「気になる点はないか」「どうすれば改善できそうか」と質問をして、巻き込み度や合意度を高める方法だ。

 表現スキルの発揮に限界的な今日の状況こそ、構成スキルで相手を巻き込むというように、リーダーシップ発揮の仕方を変える必要がある。

 山口博(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター代表取締役。慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年モチベーションファクターを設立。横浜国大非常勤講師。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社)。長野県出身。

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