近ごろ都に流行るもの

「糖質ゼロビール」芳醇麦芽、健康志向と味両立の“新標準”

 できっこないものができた! ビールメーカーの担当者の言葉だ。不可能と思われていた糖質ゼロビールが相次ぎ発売され、従来の発泡酒などでは満足できなかった本物のビール党を魅了している。日本で「ビール」を名乗るには、原料の麦芽比率50%以上が必須。その麦芽に含まれる糖質が芳醇(ほうじゅん)な味わいに欠かせない要素だが、麦芽のうまみは残し、糖質をゼロレベルまで分解する醸造技術が確立された。健康やダイエット目的で糖質制限する人が増えるなか、糖質ゼロがビールの新標準になる!? (重松明子)

 昨年10月に発売されたキリンビール「一番搾り 糖質ゼロ」に続き、4月13日にサントリービールから「パーフェクトサントリービール」が発売された。

 「大手各社のビールを扱っていますが、売り上げ順でキリンの糖質ゼロが3位、サントリーの糖質ゼロが僅差で4位に食い込んだ。キリンはすでに顧客を固めており、サントリーの新商品が出たことで、食い合いよりも相乗効果が出ている。両方買う方も多い」

 関東を中心に全国2200店以上を展開。酒の販売に力を入れるドラッグストア「ウエルシア」の足立西新井店(東京都足立区)、鶴谷忍店長(43)が反響を語った。

 両商品とも350ミリリットル缶が198円。購入層は40~50代男女が中心だ。「コロナ禍で健康志向がさらに高まるとともに、家飲み増加で味へのこだわり、嗜好(しこう)品にお金をかける傾向が強まった。双方に応える糖質ゼロビールは、すでに市場に必須の商品。今後は当然、他メーカーも出してくると思います」

 筆者も連日飲み比べている。

 色はサントリーがやや濃く、アルコール度数も5・5%と高めでコクのある飲み口。キリンはアルコール度数4%で雑味のない爽快感。味の傾向からも、両社が培ってきた醸造の特色が伝わってくるようだ。両社とも、秘密裏におよそ5年をかけて、独自の製法を実現させた。

 先行した「一番搾り 糖質ゼロ」ブランド担当の今北方央(みちお)さん(38)は、サントリーの新発売を聞いて「同じことを考え、目指していたんだな」と思ったそうだ。

 一番麦汁だけを使う「一番搾り」の製法を生かした糖質ゼロは、発売から半年後の3月、同社過去10年のビール新商品最速で累計300万ケース(大瓶換算)、1億本(350ミリリットル缶換算)販売を突破。4月の製造予定を年初計画から6割増で需要に対応している。

 「『糖質ゼロ=おいしくなさそう』という先入観を払拭するのに、一番搾りのブランドが役立った」と今北さん。商品化までの試験醸造は350回を超えた。「できっこないとされてきた目標ですが、何百とある課題を1個1個クリアしていくうちに突破口が見えてきた」。糖質ゼロにより、缶ビール(家庭用)の「一番搾り」全体の売り上げも底上げされ、今年1~3月期は前年同期比5割増となった。

 これに対して4月発売の「パーフェクトサントリービール」は、発売初週の出荷数量が約66万ケース(大瓶換算)で、当初計画の3割増、年間販売計画の3割にのぼる好調なスタートを切った。

 「当初から目指してきたのは“ビールど真ん中のおいしさ”と糖質ゼロ機能の両立。一切妥協せずおいしさにこだわり、やっと納得のいくものができた」とブランドマネジャーの稲垣亜梨沙さん(33)。

 結果的に後発となったが、糖質ゼロビールへの注目が高まる中での新発売。「まずは飲んでいただきたい」と、無料引き換えクーポン配布で100万本超の大規模サンプリングも実施する。

 「ザ・プレミアム・モルツ」という既存人気ブランドをあえて活用せず、新ブランドを立ち上げた理由を尋ねると、「新たなビールのスタンダードを創る。その思いが込められています」。

 糖質をいかに減らすかが、人類の課題となってきた現代。筆者も大のビール好きなので糖質ゼロに「飲み放題」などと浮かれてしまうが、あくまでお酒。飲み過ぎには注意したい。

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