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自由化から5年…攻勢仕掛ける新電力、市場価格急騰で不安も 果てなき消耗戦

 家庭用を含む電力小売りが全面自由化されてから5年。大手電力会社が事実上独占していた状況から、他業種からの参入が相次ぎ、消費者が電力会社を選べるように変わった。市場から安価に電力を調達する新電力会社は価格攻勢を仕掛けており、顧客争奪戦で大手電力会社は守勢に立たされる。

 「発電設備を持つ事業者は本当に苦しい。対抗のしようがない」

 関西電力幹部は昨年秋、うめくように胸の内を明かした。新電力が低価格を武器に関電の顧客を切り崩していたからだ。

 電力の自由化が始まったのは2000年。それまで首都圏なら東京電力、関西なら関電など、大手電力以外に認められなかった電力小売りに新規参入が認められた。大規模工場やオフィスから始まった規制緩和は段階的に進み、16年4月には家庭用電力の小売りが始まり全面自由化が実現した。新電力はいまや全国で約700社。電気料金比較サイトを運営する「エネチェンジ」によると、関電管内で家庭用電力販売を手掛けるのは、少なくとも40社を超えるという。

 関電管内では16年4月時点で、新電力のシェアは販売電力量ベースで7.8%しかなかった。しかし、新電力への契約切り替えは人口の多い都市部を中心に進んだ。20年12月時点では22.7%となり、東電管内(27.2%)とともに全国平均(20%)を上回る激戦地となった。

 新電力の多くは大手電力のように自前の大規模発電所を持たず、大手電力が余った電力を販売する「日本卸電力取引所(JEPX)」から調達する。市場価格は需給で変動するため、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及で多くの余剰電力が供給されると、安価に仕入れることができる仕組みだ。

 発電設備の維持費や人件費といった固定費もかからないため、料金は抑えられる。新型コロナウイルスの感染拡大で電力需要が落ちこんだ昨年度前半はさらに安く電力を調達できたため、価格攻勢が積極化した。

 「囲い込み」過熱

 関電の森本孝社長が「競争環境は大変厳しい」と繰り返し危機感を強調するように、競争は電力だけにとどまらない。ガスの小売りでもエネルギー各社はしのぎを削る。

 大阪ガスは3月9日時点で約150万件の家庭向け電力を供給。その一方で関電も2月末時点で約142万件の家庭用ガスの契約を結んでいる。両社間で顧客を奪い合ってきたことの証しで、大ガスの藤原正隆社長は「これだけ(契約を)取られる、逆に取れるとも思っていなかった」と語っていた。

 このため、両社は価格面以外でのプランの充実を図っている。大ガスは18年から、電力契約にガス機器や水回りの修理など駆け付けサービスや、動画配信サービスなどがセットのプランを展開。関電も今年2月に動画配信サービスを組み合わせた料金メニューの提供を始めた。

 両社とも生活サービスなどを提供する電子商取引(EC)サイトの立ち上げに動くなど、顧客の「囲い込み」は過熱する。

 法人向けの競争も激しい。東京電力ホールディングスの小売り部門子会社は自社の省エネシステムの構築や保守業務を組み合わせたプランを関西などでも展開する。山田真一・販売本部西日本本部長は「価格だけでは太刀打ちできない。顧客の抱える課題にどれだけ解決策を提案できるかが問われている」と話す。

 関電に再び疑惑

 大手エネルギー各社が模索を続ける中、風向きが変わったのが昨年末から1月にかけての電力需給逼迫(ひっぱく)だ。燃料不足の影響から大手電力が販売する余剰電力が枯渇し、それまで1キロワット時当たり数円程度だった市場価格は、1日平均で最も高い日は150円以上にまで急騰した。

 新電力が販売するメニューには、電気料金が仕入れ値と連動する場合があるため、一部で料金が急騰。エネチェンジには一般家庭を中心に問い合わせが殺到したという。大手電力の間では電源を持つ意義が再評価され、契約を見直す契機になるのではないか、という観測も広がった。

 しかし、大手電力に対する消費者離れが起きかねない事態が発覚した。事業者向け電力の販売エリアを制限するカルテルを結んだ疑いが強まったとして、公正取引委員会が4月、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、関電や中国電力、中部電力などの立ち入り検査を実施したのだ。関電は調査に協力するとした上で「詳細は当局の調査中であり、回答は差し控える」とコメントするにとどめた。

 エネルギー業界関係者は「事実なら自由化の趣旨を脅かす事態だ」と指摘。関電内でも「営業現場は最前線で頑張っていたはず。信じられない」という憤りが聞こえてくる。金品問題で社内外が揺れた関電は、再び信が問われる状況になっている。(岡本祐大)

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