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大気中のCO2直接回収技術を2兆円基金で支援へ 政府

 脱炭素社会に向けた機運が高まる中、政府が大気から直接、二酸化炭素(CO2)を分離・回収する「DAC」について、関連技術の開発支援を進めることが8日、分かった。脱炭素技術開発などを支援する2兆円の基金を活用。温室効果ガス排出量を2013(平成25)年度比で46%削減する目標期限の30(令和12)年度までに、CO2濃度が10~数%程度の大気からCO2を分離・回収する技術の実用化を目指す。

 DACは「Direct Air Capture」の頭文字をとった略語で、CO2濃度が0・04%程度の大気から、直接CO2を分離・回収する技術を指す。現状では十数%より低濃度の大気からの分離は技術的に難しいが、開発支援により濃度10~数%程度からの分離・回収技術を確立し、今後の技術革新の足がかりとする。

 分離・回収方法として想定されるのは、(1)CO2と結びつきやすい化学物質(吸着剤)を用いて分離した後、加熱や減圧でCO2を回収する「化学吸収・吸着法」(2)イオン交換膜などを用いて空気中からCO2を分離する「膜分離法」(3)CO2が含まれたガスを冷却し、CO2をドライアイスにして分離する「深冷法」-などがある。

 政府はいずれの分離・回収方法も日本企業が強みを持つ技術が活用できるとみており、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がCO2の分離・回収技術の開発事業を公募。企業や大学などが参画した6件の研究開発を進めている。濃度が10~数%程度の大気からCO2を分離・回収する設備を、CO2を化学品や燃料などに再活用する工場近くに設置することなどを想定している。

 CO2の回収技術では、ほかにも火力発電所や工場などから出る濃度の高いCO2を排気管から大気に拡散する前に回収し、地中に貯留する技術「CCS」があるが、DACは排ガスよりも低濃度の大気から大量のCO2を直接回収できる利点がある。政府は将来的な脱炭素への“貢献度”が高いとみて、技術開発を後押しする。

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