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欧米がにらむ人気がない政策「法人税引き上げ」 コロナで減税競争一転 (1/2ページ)

 新型コロナウイルス感染防止策や各種支援策の実施で膨らんだ財政支出に対応するため、欧米で法人税の増税を図る動きが出ている。英政府は約半世紀ぶりの増税を決め、米国もバイデン政権が連邦法人税の税率引き上げを表明した。一方、日本では10月の衆院議員の任期満了を控え、年内に選挙を行う必要があり、政府・与党は法人税を含む増税の議論には否定的だ。ただ、海外の状況が大きく変わる中、コロナ禍で進んだ財政悪化の解消に向けて、法人税などの増税の議論は早晩避けて通れないとみる有識者は多い。

 「苦渋の決断」強調

 「人気がない政策であることはわかっている」。英国のスナク財務相は、大企業向けの法人税率を2023年4月に現在の19%から25%へ引き上げると表明した際、苦渋の決断であることを強調した。

 英国で法人税率の引き上げは1974年以来。コロナ禍対応として行っている宿泊や飲食への付加価値税(日本の消費税に相当)の20%から5%への引き下げや休業者支援は継続するが、業績回復が先行する大企業への課税強化で財源を確保する。

 米国でも同様に法人税増税を図る動きが出ている。バイデン政権は4月7日、15年間で2兆5000億ドル(約275兆円)規模の増税となる税制改革案を公表。トランプ前政権下で35%から21%へ引き下げられた連邦法人税率を28%に引き上げることが柱だ。脱炭素化に向けた8年間で総額2兆2500億ドルのインフラ投資計画の財源に充てる。

 法人税が増税のターゲットとされている背景には、コロナ禍前に、先進国による法人税率引き下げ競争が繰り広げられてきたことがある。競争の狙いは企業の誘致や引き留めだったが、イエレン米財務長官はこうした税率引き下げを「底辺への競争」と批判。増税にかじを切り、「30年間にわたる法人税率引き下げ競争」と決別すると強調する。

 製造業を中心とする大企業はコロナ禍からいち早く回復しており、課税強化は国民の理解を得られやすい側面もある。各国はコロナ禍への対応策として打ち出した巨額の財政出動の結果、財政状態が悪化している。こうした財源確保に動かざるを得ない実態の中、法人税増税が格好の手段になっている形だ。

 これに対し、先進国で最悪の財政状態にある日本では、政府・与党内でコロナ禍後を見据えた増税や財政健全化の具体策はほとんど議論されていない。むしろ、衆院選や7月投開票の東京都議会議員選を控え、当面の新型コロナ対応や景気下支えのため、21年度第1次補正予算案の編成や大規模な経済対策を求める声の方が強い。

 麻生太郎財務相は3月23日の記者会見で英国や米国の状況を問われ、「(日本は)直ちに増税を考えているわけではない」と述べるにとどめた。

 ただ、麻生氏は「将来世代への責任を果たすために、今の世代が負担を分かち合う取り組みを行ってきた」(2月16日の衆院財務金融委員会)と将来の増税に含みを持たせる発言もしている。

 財務省幹部も、昨年春ごろにコロナ禍の収束後を見越して「水面下で増税を検討していた」と明かす。東日本大震災後の復興増税のように法人税や所得税、住民税などに一定期間の特別税を上乗せする仕組みが念頭にあったという。ただ、その後、感染拡大収束のめどが立たない状況に陥ったため、「今は議論が難しい」と話す。

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