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コロナ感染するリスク減のフィルム、その開発舞台裏

 コロナ禍により、ウイルス対策を日常生活に取り入れることが必須になった。不特定多数が接触する場所やウイルス細菌が付着しやすい環境において、短時間にウイルス細菌を減少させ、その効果を持続させないといけない。高度な衛生環境を保つことができれば、拭きムラがあったり、消毒頻度が少なかったりしても安心だ。ウイルスに触れなければ、感染するリスクは減る。当社が2020年に発売した除菌フィルムの開発過程を明らかにしたい。(リディアワークス代表取締役・小林史人)

 当社の除菌フィルムは、さまざまな原材料の中から銅を採用した。生産体制の構築では、部品や資材を供給してくれるサプライヤーの選別に苦労をした。リサーチから始め、数十社に問い合わせや訪問を行って加工方法や製品化の詳細を詰めていった。素晴らしい技術と経験を有している協力企業もあり、その出会いに感謝している。

 日常生活でマスクは必需品となった。外出した際の一時的な保管場所として、マスクケースがあると便利だ。そこで、抗菌ではなく、充電の必要もないのに速効性がある銅の除菌フィルムを開発した。チャック付きで、ケース内面に付着したウイルスや細菌を活性酸素により素早く減少させる。また、ボタンや机の上には、貼って剥がせるシールを開発した。アルコールなどの耐薬品性を有することで普段のお手入れも簡単にできる。スマートフォンはトイレよりも汚いといわれているので、貼るだけでウイルス細菌を効果的に減少させる除菌フィルムを開発した。モノづくりにたけた日本の優れた加工技術によって、これらを使い勝手の良い商品にすることができた。

 商品化にあたっては、まず当社が得意とする壁面・ボタンなどに貼って剥がせるシールと、マスクケースをつくることにした。シール加工は、あらゆるシール糊(のり)を加工している老舗の協力会社に相談して進めた。理由は、貼りやすい特許構造のエアレス加工ができるのと、剥がせるという糊の調合にたけているからだ。シールを剥がす際にベッタリと糊が下地に残ってしまうことがなく、ちょうどよい具合の粘着力で加工をしてくれる。次の加工で指定通りの形状で型をつくり、抜きの工程を経て、パッケージして製品化した。

 一方、マスクケースは素材の特性上、国内では数社しか加工できないことが分かった。紹介をしてもらって訪問し、加工方法や印刷手法、加工手順などの細部を決めて製造した。職人による製造技術や経験があって短時間でつくることができた。

【プロフィル】小林史人 こばやし・ふみと 本所高卒。山崎組、京王運輸、プロラボを経て2003年に家業のコバヤシ看板入社。10年リディアワークスを設立。誰でも上手に張れて環境にも優しい布看板「ルーファス」を開発し2019グッドデザイン賞ベスト100、2020年はばたく中小企業300社(経産省)選定。20年には除菌フィルム「キルウイルス」を開発し販売会社ウイルスケア設立。42歳。東京都出身。

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