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「スーパーシティ」に大阪府市が名乗り 住民不在でデータ収集優位

 大阪府市が、4月16日を期限として国が公募していた「スーパーシティ」構想に応募した。人工知能(AI)やビッグデータを活用し、未来型の都市の実現を目指す構想で、選定されれば国家戦略特区として独自の規制緩和が可能になる。ただ、スーパーシティの運営には購買履歴や移動、健康状態といった、さまざまな個人情報の収集・活用が必要で反発が予想される。実現へのハードルは低くない。

 夢洲・うめきた2期

 今回、スーパーシティ構想に応募したのは大阪府市を含み31組の自治体。6月にも開かれる政府の国家戦略特区諮問会議で5カ所程度が選ばれる見通し。

 府市は今回、「健康といのち」をテーマにしたスーパーシティ構想を提案した。実施対象としたのは、大阪・関西万博が開催される夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)と、JR大阪駅北側の再開発区域「うめきた2期」の2カ所となる。

 夢洲ではまず、万博の敷地整備の工事で、複数の建設会社の車両や人の動きを横断的にデータとして収集。AIで分析し、円滑な工事や作業員の健康維持につなげる。万博や、2024年夏に先行街びらきが予定されるうめきた2期でもデータ分析から可能になるさまざまな次世代サービスの提供を実現させる。

 スーパーシティにおける次世代サービス実現の鍵となるのが、「データ連携基盤」と呼ばれるプラットフォーム。企業や行政、個人などの膨大なデータを集約・分析し、さまざまな住民サービスの提供につなげる。国はスーパーシティ構想に応募する自治体に対し同基盤の構築を求めている。データが多く集まるほど、きめ細かなサービスの提供が可能になる。

 データの収集には、提供者の同意が必要となる。今回、府市がスーパーシティの対象地域に選んだ夢洲とうめきた2期は現在、人が住んでおらず、そのような土地は「グリーンフィールド」と呼ばれる。グリーンフィールドは、住民合意などの複雑な手間が不要で、スーパーシティの実現が比較的容易であると指摘されている。一方、他の多くの自治体は「ブラウンフィールド」と呼ばれる、既に人が住んでいる地域をスーパーシティの対象地域としている。その点で大阪は、国の承認取り付けに向け「優位な立場にある」(財界関係者)とされる。

 もっともグリーンフィールドでも今後、日中だけ来て働くだけの人などから何らかの形で情報収集の合意を得る必要がある。夢洲、うめきた2期でスーパーシティが実現した後、府市は「大阪全体のブラウンフィールドにも(スーパーシティを)展開していきたい」(大阪市ICT戦略室)考えだ。

 個人情報管理に課題

 府市のスーパーシティ構想には、関西財界も期待を寄せる。「データ連携基盤を活用し、新たな商品やサービス開発の需要が生まれれば、経済の活性化につながる」(大阪商工会議所の槇山愛湖理事)からだ。

 ただ、個人情報を集めたり利用したりするのに同意を得るのは容易ではない。そのためには購買履歴や移動、健康状態といった、さまざまな個人情報の流出、悪用やプライバシーの侵害などを防ぎ、住民らが安心できる仕組みが必要となる。同様の構想の実現が進められたカナダ・トロントでは、米グーグルの関連会社が進めたプロジェクトが住民の反対などで頓挫した。

 府市のスーパーシティ構想で、データ連携基盤に関する企画を統括する「アーキテクト」を務める下條真司・大阪大学サイバーメディアセンター長は「大阪・関西万博、またうめきた2期は(データ利活用のメリットを理解してもらう)新たなチャンスになる」と強調する。懸念を払拭し、住民の意識を変えられるか大阪の戦略が注目される。(黒川信雄)

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