JR九州が12日発表した令和3年3月期連結決算は、最終損益が189億円の赤字(前期は314億円の黒字)だった。平成28年の株式上場後、赤字は初めて。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、鉄道旅客運輸収入が前期比でほぼ半減したほか、不動産・ホテルなど鉄道以外の事業でも軒並み減収となった。4年3月期は一定の需要回復を見込み、コスト削減も進め黒字化を目指す。(小澤慶太)
売上高は前期比32・1%減の2939億円だった。本業のもうけを示す営業損益は228億円の赤字(前期は494億円の黒字)だった。コスト削減や雇用調整助成金の活用などで当初の業績予想(売上高2917億円、最終損益284億円の赤字)は上回った。
鉄道旅客運輸収入が同51・8%の763億円と半減したため、運輸サービスの売上高は同54・9%の952億円だった。不動産・ホテルの売上高も同88・3%の801億円と減収だったが、宮崎駅ビルのオープンや賃貸マンションが堅調だったため、運輸サービス程の落ち込みは回避した。
新型コロナの影響による減収は、鉄道旅客運輸収入で710億円、全体で1135億円に上るとみている。一方で従業員賞与の減額やダイヤ改正、車両導入や一部工事の先送りなどで180億円のコストを削減した。
青柳俊彦社長は記者会見で「コロナの影響をグループ全体で受けた。予想通りの非常に厳しい1年だった」と述べた。
4年3月期の連結業績予想は売上高が同17・1%増の3442億円、最終利益が129億円とし、黒字化を見込む。ワクチン接種の広がりなどにより移動需要や個人消費が緩やかに回復することを想定しているが、青柳氏は「景気回復の時期や程度は不確実性が高く、引き続き厳しい経営環境が続く」と警戒する。
4年3月期では、コロナ禍前の平成30年度比で70%程度の鉄道旅客運輸収入を見込み、引き続き140億円と大幅なコスト削減を織り込む。一方、設備投資は「西九州新幹線」に導入する車両や熊本駅ビルなどで過去最大規模の1240億円を計画する。
この日の取締役会で、青柳氏は在任8年目となる6月以降も社長を続投する方針が決まり、「安全を確保しながら徹底的なコスト削減を進める。コロナの収束を待つ戦略ではなく、抜本的な改革を行い、持続的な成長に道筋をつけたい」と強調した。