話題・その他

自民が成長戦略骨子案 脱炭素など世界の構造変化対応

 自民党が20日策定した新たな成長戦略の骨子案は、米中対立で注目される経済安全保障や脱炭素化など、世界の構造変化に対応した重要課題が列挙された。国際的に出遅れが指摘された分野が多く、挽回に時間がかかる恐れもある。新型コロナウイルス対策のもたつきで景気回復は足踏みしており、懸案の効果的な処方箋を示せるかが脱コロナ時代への移行で鍵を握りそうだ。

 政府の成長戦略会議で議長を務める加藤勝信官房長官は「コロナ禍もあり、サプライチェーン(供給網)の脆弱(ぜいじゃく)性の課題が明確になってきた」と指摘する。

 経済政策や企業活動が国の安全保障に直結すると考える「経済安全保障」。目下の懸案はデジタル化で世界的に不足する半導体だ。

 1980年代後半に世界シェアの過半を握った日の丸半導体は衰退が著しく、今は国内需要の6割超を台湾を含む海外からの輸入に頼る。米国が中国の台湾侵攻リスクに警鐘を鳴らす中で供給網寸断が現実味を帯び、国内投資の後押しなど安定確保に向けた対策が不可欠だ。

 脱炭素化では、東日本大震災後の原発停止で電力確保のため火力発電に頼ったことで「石炭中毒」と揶揄(やゆ)されるほど対策が遅れた。狭い国土で太陽光や風力発電を普及させるハードルは高く、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合(2017年)は欧州が30%超、中国も26%なのに比べ日本は16%どまり。ガソリン車から電気自動車(EV)への移行など産業構造の転換で影響を受ける労働者の再雇用を含め、中長期的な支援策が求められる。

 「周回遅れ」と指摘されるデジタル化の停滞や、臨床試験(治験)の不足などによる国産ワクチンの開発遅れは、かつての技術立国の凋落(ちょうらく)を印象付けた。ワクチン接種が進まず感染拡大で4~6月期の国内総生産(GDP)は2四半期連続のマイナス成長が見込まれており、菅義偉政権に厳しい目が向けられる。だが、荒廃した経済を再興し、コロナ禍で広がった格差を解消する新たな政策パッケージは挽回の好機でもある。

 安倍晋三前政権の経済政策アベノミクスは「三本の矢」のうち機動的な財政出動と大規模金融緩和が景気浮揚に効果を発揮したが、日本の潜在成長率や生産性は低迷を続け、3本目の成長戦略が機能しなかったとの見方は根強い。菅政権初となる今回の成長戦略は、過去の焼き直しではなく、コロナ後の望ましい日本の姿を大胆に描く必要がある。(田辺裕晶)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus