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進化する仮想空間活用 歌舞伎公演やショッピング、IT技術革新で未来の基盤に

 新型コロナウイルス感染拡大で大規模な集客が困難になる中、イベントなどでの仮想空間の活用が本格化している。通信各社のサービスでは実際の劇場や街並みを仮想空間に再現し、参加者同士が交流することも可能。仮想空間とネット通販との連携で買い物などを楽しめるようにするなど、コンテンツの充実も図られている。高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの登場などのIT技術の進化は、仮想空間をより積極的に活用することを可能にしており、社会を一新する可能性を秘めている。

 4月下旬、オンライン上の仮想空間に再現された京都南座で歌舞伎俳優の中村獅童さんらによる「超歌舞伎」が上演された。中村さん自身は入場制限をかけた幕張メッセ(千葉市美浜区)の会場で観客を前に公演。これを中継で仮想の南座に映し、現実と仮想の舞台で同時に楽しむ趣向だ。

 仮想南座では来場者は自分の分身を操作し、観客席の好きな位置から超歌舞伎を鑑賞する。位置によって音の聞こえ方が変わったり、隣の人と声で会話できたりと、実際の観劇のような体験ができる。仮想南座はNTTのサイト「ドア」に設けられた。

 一方、KDDI(au)は昨年5月、東京の渋谷周辺を3Dで再現した「バーチャル渋谷」をオープン。今月25日には原宿周辺も「バーチャル原宿」として再現し、仮想空間を拡張する。「ラフォーレ原宿」などの商業施設と連携し、買い物ができるネット通販のショップも開設する。ソフトバンクも仮想スタジアムでの野球観戦や、アイドルの音楽ライブ配信などに注力する。

 仮想空間活用の背景には新型コロナが浮き彫りにした集客イベントにおける感染リスクがある。同時に、人気ゲームの中には仮想空間で世界中の人々が交流することが当たり前なケースもあり、「コロナ収束後も仮想空間でのイベントは定着していく」(関係者)とみられている。

 日本でも昨春に5Gの商用サービスが始まり、情報量の多い仮想空間でのイベントに外出先からでも気軽に参加できる可能性が高まった。5G以降の世界では大量のデータに基づいて人や物の動きを仮想空間に再現し、自動運転の危険予測や産業の効率化、社会課題の解決に役立てる構想もある。仮想空間に現実を再現する技術はそうした未来の基盤となる。(高木克聡)

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