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中国、予測よりも早く総人口の減少か 腑に落ちない出生数のデータ

 「中国の昨年の総人口は50年ぶりに減少となり、14億人を下回った」-。4月末、英紙フィナンシャル・タイムズの報道が世界を驚かした。ところが、中国国家統計局が昨年実施した国勢調査をもとに発表した数字は14億1178万人で、前年比約1100万人の増加だった。あまりに違いが大きすぎるが、国勢調査を信じるしかないのだろうか。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 どうにも腑に落ちないのは、出生数のデータである。国勢調査の発表を受けて、統計局は抽出調査で出していた2011~19年の出生数データを修正せざるを得なくなった。出生数は年平均で100万人ほど増えることになる。統計の信頼性を揺るがしかねない修正といえよう。

 出生数でもう一つ疑問なのは、国勢調査の発表より前に公安省が、昨年に登録された出生数は約1004万人だったと公表していることだ。国勢調査による昨年の出生数は約1200万人なので、登録出生数との間にほぼ200万人の差異がある。いくらなんでも、登録出生数まで修正するわけにはいくまい。

 もっとも多少の修正をしても、出生数の減少傾向には、歯止めがかかりそうにない。当局は16年に打ち出した「二人っ子政策」などの措置によって、出生数は増えていると答弁している。ところが実際には、一時的に増えただけで、その後は減少傾向が続いている。特に昨年は北京市など多くの地域で出生数が減っている。少子化が加速する東北地方からは、早くも人口抑制策を完全撤廃してほしいとの要請が出ている。

 若者の生活スタイルが変わった上に、先行きへの不安感もある。新型コロナウイルスの流行が、そうした不安感を助長したのは間違いない。

 総人口については、政府系シンクタンクの中国社会科学院が19年に、中国の人口は29年にピークとなり、30年から減少に転じるが、「合計特殊出生率」が低めに推移すれば、27年から減少が始まる可能性もあるとの予測を出していた。

 しかし、中国の専門家の間からは、来年にも総人口が減少に転じるのではないか、との見方も出始めている。そうなれば、従来の予測よりもかなり早まることになる。人口高齢化も、国連が「高齢社会」と定める65歳以上人口14%を超えるのは時間の問題だ。豊富な労働力をてこに、猛烈な勢いで発展してきた中国だが、総人口減少を機に、一気に老いの時代に突入していこう。

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