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ウイグル収容所の有無は「知らない」 ポリシリコン製造企業、部外者に工場公開

 中国の新疆ウイグル自治区で太陽光パネルの重要な成分であるポリシリコンを製造している大全新能源の工場に今月第3週、記者やアナリストが入った。労働慣行をめぐり同自治区のソーラーパネル事業に厳しい目が向けられてから、部外者が生産現場への立ち入りを許されたのは初めてだ。

 やはり同自治区でポリシリコンを生産している他の3社とは異なり、大全は人権侵害問題とは結び付けられていない。だが、中国政府の労働プログラムと関係する競合他社同様、幹部へのインタビューと外国人による工場見学を今年3月まで拒んでいた。国際社会はイスラム系の少数民族ウイグル族らを強制的に働かせているとして、この労働プログラムへの監視を強めている。

 米制裁回避を狙う

 大全の楊明倫最高財務責任者(CFO)はインタビューで、新疆ウイグル自治区で生産されるポリシリコンがバイデン米大統領によって禁止される可能性が「十分ある」と認めた。同自治区に拠点を置く企業で米国に上場しているのは同社だけで、外国人投資家や監督当局の懸念は無視できないとし、「特に大衆やメディア、一部の投資家がそう認識するリスクがあることを理解している」と述べた。

 気候変動問題を担当するケリー米大統領特使は「中国のソーラー製品が強制労働を通じて生産されている例があると当局は考えており、米政府が制裁を検討している」と語った。大全の狙いはこうした制裁の適用除外だ。米政府は今月、中国のスマートフォンメーカー、小米を軍事関連企業の投資禁止リストから外すことで合意した。

 米コーネル大学で学んだ楊氏は台湾生まれ。マッキンゼーの元コンサルタントで、2015年に大全に入社した。視察ツアー前夜、楊氏は地元ホテルでの夕食会で外国人記者団とともに茅台酒を楽しんだ。同氏によれば、大全は政府の労働プログラムに参加しておらず、ウイグル人は一人も雇用していない。

 当局が職業訓練施設だと主張する収容所を含め、ウイグル族に対する政府の扱いについての考えを尋ねると、楊氏は「そうした施設が実在するのかどうか私には本当に知らない」とした上で、「実在するのなら、それを判断する道徳的基準があると思う」と話した。

 楊氏と同氏のチームは強制労働を一切容認しない「ゼロトレランス」が大全の方針だと立証するため、同社業務の人権状況を監査する第三者機関を起用する計画だ。世界的な監査法人および米政府が言及している2つの公正な労働機関の計3つの機関を最終候補として絞り込んでおり、大全の主要サプライヤーも恐らく監査対象になるとしている。

 大全による透明性向上の取り組みが、新疆ウイグル自治区に工場を置く新特能源と保利協●能源(GCLポリ・エナジー・ホールディングス、●=晶の三つの日を金に)、東方希望集団(イースト・ホープ・グループ)の労働慣行に対する懸念を強める可能性もある。大全と合わせ4社の工場はポリシリコンの世界供給量のほぼ半分を提供し、世界中のソーラーエネルギー急増に寄与している。

 兵団と「協力なし」

 大全工場の視察にはHSBCとJPモルガン・チェース、クレディ・スイスのアナリストも参加。楊氏は「政府に労働プログラム参加を要請されても、大全は加わらない」と明言。外国から出資を受けている企業として、大全にはそうした命令に従う義務はないだろうし、同社には「極めて高い誠実さの基準」があると説明した。

 楊氏によれば、米政府がウイグル族の大規模拘束など「深刻な人権侵害」に関与しているとする準軍事組織の「新疆生産建設兵団(兵団、XPCC)」と大全は関係していない。兵団に所有されていない「完全な外国所有企業」であり、兵団との「協力はない」と楊氏は言うが、兵団は大全の工場がある石河子市の開発を監督した。

 英シェフィールド・ハラム大学のローラ・マーフィー教授らは「大全と兵団に長期的な互恵関係がある」としてその詳細を記した報告書をまとめ、大全の一部主要サプライヤーが政府の労働プログラムから労働者を採用している可能性を示す公的文書も示した。大全はこれらサプライヤーの工場で強制労働の証拠は一切見つからなかったとしている。

 企業側は「内部告発者を守ることを保証し、自由で監視のないウイグル人労働者の声を中心とする抜き打ち監査を認めなければならない」と同教授は指摘。「収容所が運営されている限り、新疆でこうした条件を担保できる企業はない。ガイド付きの工場ツアーで何も分からないのは確かだ」と述べた。(ブルームバーグ Colum Murphy、Tom Mackenzie)

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