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コロナ禍で大きな転換点、スポーツビジネスと五輪の理想

 【スポーツ・健康のいま】典型的な「スポーツビジネス」は、スポーツをしたり、見たりすることを「スポーツサービス」という商品として市場に提供するものだ。身体や心の健康増進はもちろん、一緒にプレーしたり、観戦したりして喜びや感動、悔しさなどを共有したりして互いのつながりを実感する。これが、スポーツビジネスが提供する重要な社会的機能だろう。(種子田穣)

 そして、スポーツサービスを購入した顧客に加え、そこで働く人や、そのビジネスに関わる人すべてに「幸せ」を提供し、その結果、企業は利益を得る。

 なかでも巨額の入場料や放映権料、スポンサー収入、ロイヤルティー収入をもたらす顧客を持ち、他のスポーツイベントとは比較にならないほど多様で幅広い利害関係者が関わるオリンピックもまた一大スポーツビジネスの場である。

 その理想は、「全ての顧客、利害関係者を幸せにする場となること」だ。しかし、コロナ禍によって東京五輪・パラリンピックは、従来同様の形での開催は望めなくなってしまった。

 開催が1年延期され、多額のスポンサー料を支払った企業は予定通りの活動が展開できずに宣伝効果は薄まり、アスリートたちは先行きの見えない不安の中で競技力向上に努めることを強いられている。観戦が制限されれば入場料収入の減少は避けられず、開催国は大きな打撃を受けることになるし、海外からの入国制限は各地の観光産業の期待を裏切ることにもなる。

 一方で、国際オリンピック委員会(IOC)の収入の8割近くを占めるといわれる巨額の放映権料はほとんどコロナ禍の影響を受けないと考えられ、このままでは顧客、利害関係者間に大きな不均衡を生じる。こうした不均衡の放置はオリンピックを支えてきたビジネスモデルを崩壊させる。

 オリンピックの開催費用の高さが問題視され、オリンピック以外の大規模スポーツイベントの多様性、世界のプロスポーツの魅力が増す中で、オリンピックの立ち位置や意味合いも大きく変化し始めている。そう考えると、スポーツビジネスの仕組みの面からもオリンピックは今、大きな転換点を迎えているといえる。

 【プロフィル】種子田穣(たねだ・じょう) 立命館大スポーツ健康科学部教授。10年以上にわたる米プロフットボールリーグNFLのビジネス研究を通じてスポーツビジネスの力に驚愕。特にその優勝決定戦、スーパーボウルの魅力と熱狂には圧倒された。現在は同大相撲部の部長を務める。ブルドッグ愛好家。

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