高論卓説

SDGs達成のカギ 「モチベーションファクター」の活用を

 「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が策定されている。17のゴール、169のターゲット、232の指標と多岐にわたるが、共通の考え方は、多様な環境や価値観をもつメンバーを、「誰一人取り残さない」包摂性をもって、参加型で取り組むということだ。(山口博)

 このように申し上げると、「環境が異なる196カ国、価値観が異なる78億人に、それぞれどのように対応すればよいのか」という意味の声に接する。一人一人に異なる精緻な対応をしようとするから、実現可能性が低下するのだ。環境への対応や価値観の実現の元になる要素に着目して、国や人それぞれで異なるその要素に働きかけると、多様なメンバーの参画を促し、誰一人取り残さない確度が高まる。

 その要素として、私が着目するのが、モチベーションファクターだ。モチベーションファクターとは、意欲が高まる要素なので、環境への対応や価値観の実現の元になる。私はモチベーションファクターを、何によって意欲が高まるかによって、目標達成、自律裁量、地位権限、他者協調、安定保障、公私調和の6つに分けている。前三者の強い人を牽引(けんいん)志向、後三者の強い人を調和志向の高い人と呼んでいる。

 20年来の能力開発演習経験を踏まえれば、日本のビジネスパーソンのモチベーションファクターは、これらの6つにほぼ均等に分かれる。ということは、6分の5の確率で、自分と相手のモチベーションファクターは異なるということだ。このモチベーションファクターのギャップを解消することで、誰一人取り残さない多様なメンバーの参画を実現しやすくなる。

 大事なことは、相手のモチベーションファクターを無視したり、自分と同じだと決めつけたり、相手が自分に合わせるべきだと固執したりしないで、相手のモチベーションファクターを見極めることだ。慣れれば2分程度で、だいたいその人が牽引志向か調和志向か、さらには6つのモチベーションファクターのどれが強そうか見当がつくようになる。それができたら、相手のモチベーションファクターの内容やフレーズを組み込んで話をすると、驚くほど相手を巻き込みやすくなる。

 組織におけるモチベーションファクターの分散度にも注意が必要だ。同じモチベーションファクターに偏っている組織は、組織内の統率はしやすいが、組織外の多様な人たちの巻き込みの難易度は上がる。逆にモチベーションファクターが分散している組織は、組織内の巻き込みの難易度は高いが、組織外の多様な人を巻き込みやすい。

 その組織のビジョン実現のために必要なモチベーションファクターと、現状のモチベーションファクターのギャップを解消すると、ビジョン実現度が高まる。例えば、独創的な開発を推進するという自律裁量のモチベーションファクターを必要とするビジョンを掲げている組織があったとする。一方その組織のメンバーは、自律裁量のモチベーションファクターを持ち合わせておらず、独創性よりは協調性を好む他者協調のモチベーションファクターの持ち主だったとする。ビジョンの実現度の高低は、組織メンバーのモチベーションファクターのギャップの小さいか大きいかにも左右されるのだ。多岐にわたる国際目標であるSDGsも、モチベーションファクターという簡単なモデルで、一人一人が実現に向けて参画できるのだ。

【プロフィル】山口博 やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役。慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年モチベーションファクターを設立。横浜国大非常勤講師。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社)。長野県出身。

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