金融

英のTPP加入交渉入り決定 加盟国拡大へ一歩、中国牽制効果も

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する11カ国は2日、閣僚級会合「TPP委員会」をオンライン形式で開き、英国による加入申請への対応を協議。議長を務めた西村康稔経済再生担当相は終了後の記者会見で、TPP委員会が英国の加入交渉の開始を決定したと発表した。交渉開始決定は発足国以外で初めてとなる。

 TPPへの英国加入の動きは、参加国の増加による経済圏の拡大にとどまらない。インド太平洋地域での通商貿易におけるサプライチェーン(供給網)で中国への牽制(けんせい)を強める経済安保の側面からも重要となりそうだ。

 加入に向け、本格的な交渉を行う作業部会は数カ月以内に始まる見通しだが、最終的な加入の可否の判断は来年以降になる可能性がある。委員会はTPPの運営などに関する最高意思決定機関で、今年は日本が議長国を務める。協定では、申請国との交渉開始は発効済みの全7カ国の同意により決定と規定。今後は交渉のための作業部会を設け、貿易・投資ルールや関税に関して協議入りする。

 英政府は外交安保政策でインド太平洋地域でのプレゼンス(存在感)を高める方針を打ち出し、このほど、最新鋭空母「クイーンエリザベス」を中核とする空母打撃群をインド太平洋地域へ展開。覇権的な海洋進出を強める中国を牽制する狙いがあるとみられている。

 この流れは、TPPへの参加という通商面でもつながってくる。

 英国経済に詳しい第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「英国は実利重視の戦略外交国家。TPP参加国には対中警戒を強めている国も多い」とした上で、「空母派遣でインド太平洋地域への関与強化と対中包囲網への参加をアピールし、TPP参加の推進力にする狙いもあるのではないか」と分析する。

 加えて、英国がTPPに加入し欧州とアジアを結ぶ役割を担うことになれば、他の欧州連合(EU)各国も刺激を受け、アジアと自由貿易協定(FTA)を結ぶためにTPP加入を考えるきっかけなる可能性もある。さらに、足元では参加に消極的な米国の再加盟なども実現すれば、TPPによる対中包囲網の拡大につながる。

 もっとも、「英国と加入交渉を進める際、仮に例外の適用を訴えてきても、既に高いレベルにあるTPPルールに従ってもらうという原理原則は死守しなければならない。もし、例外を少しでも許せば、足元で加盟を示唆している中国もその点を突いてくる」(政府関係者)とし、緊張感を持って英国の加入手続きを進める必要性を説く。今年TPP議長国を務める日本にとって、難しいかじ取りが控えている。(那須慎一)

【用語解説】環太平洋戦略的経済連携協定(TPP) アジア太平洋地域の国々による経済連携協定(EPA)。貿易自由化を推進するため、農産品や工業製品の関税削減・撤廃に加え、知的財産保護など広範囲でルールを決めた。当初12カ国が署名したが、米国がトランプ政権発足後に離脱。11カ国で協定をまとめ直した。国内手続きを終えた日本、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの6カ国で2018年12月に発効。ベトナムも19年1月に発効に加わった。中国や韓国、台湾が参加に関心を示している。

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