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トヨタ式でワクチン集団接種効率化 無駄なく、人の流れ秒単位で把握

 トヨタ自動車が、車両生産で培った独自のノウハウを自治体による新型コロナウイルスワクチンの集団接種に応用し、効率化を支援する取り組みを始めた。人の流れを秒単位で細かく把握し、接種会場内の配置や配送体制を適切に決定。無駄をなくし、混雑のないスムーズな接種を目指す。本社がある愛知県豊田市を手始めに、全国の自治体の支援も検討している。

 企業や大学を含めた全国での大規模接種を控える中、トヨタ、ヤマト運輸、行政などが連携した「豊田市モデル」は、運営の参考になりそうだ。

 「思ったよりも短時間で受けられた」。5月30日に開設された豊田市の接種会場で、男性(81)は笑顔を見せた。設営には随所に「トヨタ生産方式」の考え方を導入。来訪者の袖まくりに10秒、注射に90秒と必要な時間をきめ細かく整理。ワクチンの希釈や診察の時間などを踏まえ、待機の座席や接種場所の数を設定し、無駄をなくした。

 接種ルートは「一筆書き」とし、看板での案内を充実させ、高齢者でも迷わないようにした。トヨタの担当者は「人が吸い込まれるように流れるのが理想」と説明する。接種後の待機場所に人が増えた場合は、即座に座席配置を変更するなど、その場で「カイゼン(改善)」。初日は目立った混雑は起きなかった。

 余剰分の廃棄をなくす仕組みもつくった。通常、会場までは冷蔵輸送し、その場合の有効期限は5日間。トヨタの在庫管理やヤマトの配送のノウハウを活用し、マイナス60度以下で配送、保存し、有効期限を半年にした。会場で余った分を回収し再利用できる。

 実現に貢献したのは静岡県沼津市の中小企業「エイディーディー」の冷凍庫だ。不足が懸念されるドライアイスを使わずに、超低温を長時間保つ保冷剤を作れるようになった。トヨタの技術者の支援で量産を加速した。

 豊田市モデルを主導したトヨタ生産調査部の幹部は「安全で安心な世の中がトヨタのビジネスの基盤だ。一人でも多くの接種に貢献したい」と語った。

【用語解説】トヨタ生産方式 生産現場の「無駄」「無理」「ムラ」をなくし、良い製品を効率よく造るためにトヨタ自動車が開発したシステム。自動車や部品の在庫を多く持たず、注文を受けてから短期間で生産する「ジャスト・イン・タイム」や、作業工程の効率化を絶えず追求する「カイゼン(改善)」が含まれる。トヨタグループの創始者、豊田佐吉の着想を基に確立され、現在までトヨタの高い収益力の源泉となっている。

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