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集団接種にチャンス見いだす 観光、運輸業界のワクチンツーリズムサービス続々 (2/2ページ)

 運輸業界にも恩恵

 集団接種の会場へスムーズに移動してもらおうと、自治体が民間のバスを借り上げて直行便に利用する動きが広がっている。接種の利便性を高めようという試みだが、コロナ禍で経営が圧迫されているバス会社にとっても思わぬ恩恵となっている。

 「無料なのに便数も多い。早くワクチンを打ちたかったので、とても助かった」。大阪府富田林市の会場への輸送を担っている近鉄バスには、乗車した高齢者から感謝の声が寄せられたという。バスは約30分おきに近鉄の富田林駅から発車。市が同社と契約し、乗車料金は無料だ。

 同様の動きは各地で広がる。大阪シティバスは大阪市の要請を受け、接種センターとなった府立国際会議場と、梅田や難波を結ぶ直通バスを運行。奈良交通も奈良県明日香村で、近江鉄道は滋賀県草津市で、会場への直通バスを運行する。

 迅速な接種完了を目指す自治体にとり、移動手段の確保は重要な課題だ。明日香村の担当者は「村の人口の4割超は高齢者で、免許を返納した人も少なくない。山間部など接種会場から数キロ離れた場所に住む人もいる。広い車内で密を避けられ、安全に運べるメリットは大きい」と語る。

 バス会社にとっても直通バスは“朗報”だ。あるバス会社は「乗車率はコロナ前から5~7割の水準にまで落ちている。事業の委託はありがたい」と話す。

 バスを接種会場として提供しようという事業者も現れた。南海電気鉄道グループの関西空港交通は、ワクチン接種ができるスペースを設けたバスを用意し、自治体へ提案している。担当者は「都合のいい場所に移動でき、トイレや冷暖房も完備している。病院で接種した後の休憩場所にも使える」とアピールする。

 奈良県橿原市はワクチンの接種券と一緒に、500円分のタクシー券4枚を送付している。市内のタクシー会社は「1日あたり30~40枚の利用がある。コロナ禍前より売り上げは半分程度に落ち込んでいたが、直近では利用者が増え日中の予約が取りにくいこともある」と話す。(黒川信雄、田村慶子)

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