新型コロナウイルス感染拡大が止まらない中、オンライン商談に活路を見いだす“ものづくり企業”が増えている。製品という「現物」を扱うが故に対面式に重きを置いてきたため、なかなか進まなかったオンラインやリモート形式が、ものづくりの世界に徐々に浸透。集客を助けるサービスも登場している。
リニアガイド(直動装置)などの機械部品を手掛けるTHKはオンラインによる常設展示会に、新サービス「オムニエッジ」を出展している。リニアガイドに専用のセンサーを組み込み、故障の予兆を検知してオンラインで知らせるサービスで、2019年12月に始めた。だが、その直後に新型コロナが世界的に流行。各種産業部品関連の展示会が軒並み中止になり、新サービスのアピールの場が奪われた。
そこでTHKが注目したのはオンライン展示会。ベンチャー企業エボルト(東京都渋谷区)の常設展示会に昨年11月にこのサービスを出展した。常設展示会のサイトにはサービスの概要をまとめた30秒の動画を載せている。
THKは機械部品を扱うことからこれまでの商談相手は機械メーカーが中心だったが、新サービスはその部品が入っている機械を使う工場などいわゆるエンドユーザーにあたり、いままでと客層が異なる。IoTイノベーション本部企画・マーケティング部の高野修一氏は「カタログ情報をメインにした機械部品と違い、サービスのコンセプト、目指す世界観などを伝えることを意識した」と話す。
ベンチャー企業のアペルザ(横浜市西区)も展示会運営のJTBコミュニケーションデザイン(東京都港区)と業務提携し、オンライン展示会に乗り出したほか、年間300本前後の産業展示会を企画する大手リードエグジビションジャパン(同新宿区)も今月16~18日に初のオンライン展示会「第1回ジャパンITウィーク」を開く。
一方、オンライン展示会の集客を助けるサービスも登場した。クラウド名刺管理のSansan(サンサン)は、個人向け名刺管理サービス「Eight(エイト)」上で、開催予定のオンライン展示会が一覧できるサービス「EightONAIR(オンエア)」を無料で始めた。
展示会に参加したい人は、オンライン名刺交換で参加登録できる上、開催10分前には通知される。オンライン名刺交換した人がどの程度イベントに関心を持っているかも分かる。
イベントの主催者にとっては、開催するイベントの告知サイトと視聴用のアドレス、開催日時を登録するだけで済む。サンサン担当者は「オンラインによる企業のプライベートショー(自社製品展示会)は今後増える」とみており、既に400件のイベントの掲載申し込みが入っているという。(松村信仁)