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飲料各社「脱アル・低アル」加速 健康志向、若者離れ…味・価値追求した新商品

 飲料各社が、ノンアルコール(ノンアル)飲料の市場を開拓している。背景には若者のアルコール離れや健康志向の高まりがあるほか、世界保健機関(WHO)が飲酒問題に懸念を示したことも各社の背中を押している。WHOは同じく嗜好(しこう)品とされるたばこを健康への悪影響を問題視して厳しく規制した経緯があるだけに各社は神経をとがらせており、自ら飲み過ぎを避けるよう促す取り組みが始まった。

 「世界でのノンアルコールのトレンドは、今後も加速が予想される」。29日にワイン系ノンアル飲料「モクバル」を発売するメルシャンの担当者は9日の発表会で、こう強調した。

 国税庁などによると、国内の酒類の出荷量を示す移出数量は長らく減少傾向にある一方、ノンアル飲料は規模が小さいながらも過去10年間で1.5倍以上に伸びている。2020年の出荷量は28万7000キロリットルに達する見通しだ。4月の飲料大手4社の販売数量でも、ノンアルコールビールがいずれも前年同月を上回った。

 厚生労働省の19年の調査によると、飲酒の頻度について「ほとんど飲まない」と答えた人は全年齢層で15.9%いたが、30代に絞ると20.3%、20代では26.5%に上る。ビール需要は頭打ちと評される中、ノンアルや低アルコール市場の開拓は「お酒を飲まない層への新たなアプローチ」(アサヒビール)として注目を集めている。

 海外で先行していた、アルコール飲料に味を近づける技術なども、商品開発を後押しした。大手広報は「ノンアルはかつて『我慢の飲み物』とされてきたが、味や価値の追求が進み、ポジティブに飲まれている」と手応えを示す。

 大手からは近年相次いで新商品が出されている。メルシャンを傘下に持つキリンホールディングス(HD)グループのほか、サッポロビールは機能性表示食品のノンアルビール「うまみ搾り」を発売、サントリースピリッツはノンアルのレモンサワーを売り出した。アサヒビールは、25年までにアルコール度数3.5%以下の商品構成比を20%に引き上げる目標を掲げ、今年も複数の商品を発表している。

 これらの動きは一方で、業界の命運をかけた取り組みでもある。WHOは13年、アルコールによる健康被害などを少なくとも10%削減する世界目標を掲げた。その後も飲酒問題について提唱し、22年の総会では具体的な計画について検討される見込みだ。

 WHOの動向に、業界内では「たばこの次は酒か」との警戒感も高まる。生き残りをかけたたばこ業界が加熱式たばこを投入したように、飲料各社でも適度な飲み方を指す「適正飲酒」を促す流れが強まり、ノンアル飲料の開発競争が始まった。

 このほか大手などは、商品のアルコール度数(%)だけでなく量(グラム)もホームページや容器に表示する計画を進める。個人に合わせた節度ある飲み方を啓発するなど、対策の幅は広がっている。 (加藤園子)

■脱アル・低アル、コロナ禍も転換後押し

 ノンアルコールや低アルコール飲料の伸びは新型コロナウイルス禍も関係している。飲酒を伴う会食が感染拡大の要因の一つとされる中、ノンアル飲料は飲食店でも人気が上昇。外出自粛は消費者の健康志向も強めており、コロナ禍もノンアルシフトへの転換点となった形だ。

 ビール大手4社の昨年12月期連結決算は、飲食店の営業時間短縮や休業で業務用の酒類販売が大幅に落ち込み、そろって減収となった。一方で、お酒の代わりの選択肢としてノンアルビールを提供する飲食店も増加。キリンビールのノンアルビール「零ICHI」は4月の業務用販売数量が前年同月比で5倍となった。

 一方、「家飲み」や運動量の減少に伴う健康志向の高まりもノンアル人気を支える。サントリーはノンアル飲料を飲む量が半年前より増えた人は「健康に気を付けたい」「休肝日をつくりたい」など、健康面を意識していると分析している。ノンアルビールは「在宅時間の充実に役立っている」とも指摘した。

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