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「CSV経営」で変わるアース製薬 感染症対策新技術の旗振り役担う (2/2ページ)

 MA-Tシステムは活性度の強弱を制御することで除菌消臭だけでなく農業、食品添加物、医薬品、再生可能エネルギーの分野などで応用が可能であることが分かっているからだ。日本MA-T工業会常務理事の桜井克明氏は次のように語る。「不要なメタンガスを原料に使うバイオ燃料製造や次世代型『全固体電池』の実用化など広範な分野で役に立つ。しかも原料は国産なので海外に頼ることなく国内で賄うことができる」。

 アース製薬はこうした流れを受け、今月1日には医療分野を除くMA-Tシステムの技術ライセンスや製造権・知的財産権の使用範囲の拡大で提携2社と合意。除菌剤以外の事業分野でも実用化を加速させていくための旗振り役を担う。

 そして30年を目標に日本のみならず、タイ、ベトナム、ミャンマーなど東南アジア各国やアフリカを対象に、ウイルス、微生物、多剤耐性菌の感染拡大を抑制するため、国連や公的機関への調達事業の展開を目指していく。さらに世界の課題となっている温暖化に対する対策としての高分子・分子・エネルギー分野においても、MA-T活用の可能性を拡大していくという。

 「アースだけで地球に貢献できることは限定的。日本MA-T工業会の会員企業をはじめとする幅広い企業・研究機関・各種団体と連携し、『地球』との共生を実現していきたい」とアース製薬の川端克宜社長兼最高経営責任者(CEO)は語る。

 新型コロナをはじめとした国際社会共通の課題を解決する「CSV(共通価値の創造)経営」で大きく変わろうとするアース製薬。その行方を注目したい。

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 松崎隆司(まつざき・たかし) 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『ロッテを創った男 重光武雄論』など多数。埼玉県出身。

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