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2050年には84兆円市場、水素時代の覇権争い始動 エコ設備など存続かける (1/2ページ)

 脱炭素化の取り組みが加速する中、ガス事業を手掛ける英BPなどエネルギー大手各社が次世代のクリーンエネルギーである水素全盛時代に向けた準備を着々と進めている。天然ガス需要の先細りは避けられず、手をこまぬいていれば市場シェアを失いかねないためだ。水素生産に向けた環境対応型設備の整備など、新市場の覇権争いが水面下で始まっている。

 当面は「ブルー」有利

 国際エネルギー機関(IEA)は5月18日に発表した温室効果ガスの排出を差し引きゼロにする「ネットゼロ」達成への工程表で、輸送や鉄鋼、化学産業による排出削減への取り組みに伴い、2050年までに水素の需要が6倍に膨らむとの見通しを示した。現在、ほぼ全ての水素の生産に天然ガスが使われている。

 ネットゼロに向けた最も直接的な方法は「グリーン水素」と呼ばれる、再生可能エネルギーを使った水素の生産だ。だが、温室効果ガスを排出せずに水素を生産するのは高くつく上、水素は貯蔵が難しい。これに加え、可燃性が非常に高いという問題もある。

 それでもクリーンエネルギーとしての水素は、50年までに世界のエネルギー必要量の4分の1に対応でき、年間の売上高は6300億ユーロ(約84兆円)に達する可能性がある。ガス各社は、この巨大市場のシェアを獲得しようとしている。

 ガスを生産している英BPや中国石油化工(シノペック)、ノルウェーのエクイノール、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルなど大手各社は、天然ガスから水素を取り出す過程で排出される二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する「ブルー水素」方式で生産するに当たり、既存のパイプラインや貯蔵タンカー、燃料供給を活用する計画だ。

 現在はガスが再生可能エネルギーより安価で、風力や太陽光発電が増えるまでの少なくとも30年までは、CO2の回収・貯留コストが上乗せされても、ブルー水素の方が有利だ。排出量を削減し、今後10年での廃業回避を目指すガス生産会社は、ブルー水素の事業構築に数十億ドルを投じる計画で、英国やドイツ、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、ニュージーランドでは、27年までに少なくとも15件のプロジェクトが軌道に乗るとみられている。ブルームバーグニューエナジーファイナンス(BNEF)によると、30年までに軌道に乗らないプロジェクトは競争力がなくなる恐れがあるため、ブルー水素の生産を迅速に拡大する必要がある。

 ノルウェーのスタバンゲルに本拠を置くエクイノールで開発生産部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるアル・クック氏は「目指すのはグリーン水素だが、水素エネルギー事業はブルー水素で進めるつもりだ。ある時点でグリーン水素のコストがブルー水素を十分に下回ってくるかもしれないが、少なくとも10年はその可能性が低い」と話す。

 シェルの水素担当バイスプレジデント、ポール・ボーガーズ氏は「炭素回収の強化はブルー水素プロジェクトを初日から大規模展開できることを意味する」と語る。同社は25年に軌道に乗る予定の英国の「エイコーンプロジェクト」、「ネット・ゼロ・ティーズサイド」をはじめ、複数のプロジェクトに関与している。

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