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アジアの航空需要、欧米より見劣り 新型コロナワクチン接種進まず観光業失速

 世界の航空業界を長年牽引(けんいん)してきたアジア地域がここ数週間、ワクチン接種が進む米国に比べ、需要回復で後れを取っていることがデータで明らかになった。アジアの航空業界の復活は、入国規制とワクチンの展開の遅さから行き詰まっている。

 露はコロナ前水準

 北半球で夏の休暇シーズンが近づくにつれ、世界の航空輸送力はコロナ禍前の2019年の水準のほぼ6割に戻っている。ロシアはほぼ19年並み、ナイジェリアは同年比で7.3%増加。回復ペースが上がる米国は、今は同年を23%下回る水準まで持ち直している。特に5月最終月曜日のメモリアルデー(戦没者記念日)の連休前の5月28日の搭乗者数はほぼ1年3カ月ぶりの高水準となった。

 対照的にアジアの航空業界は停滞している。ウイルスをほぼ封じ込めた香港でも引き続き厳格な隔離措置がとられ、旅行先としての魅力に欠ける状態だ。

 世界のワクチン接種回数は20億回を超えており、それを主導するのは米国と英国だ。中国の接種回数が6億8000万回だが、他のアジア諸国の摂種率ははるかに低い。観光地であるタイやベトナムでさえ接種率はそれぞれ人口の2.6%、0.6%にとどまる。

 世界の航空機データを分析する英OAGアビエーションのアジア太平洋部門責任者、マユール・パテル氏は「ワクチン接種の展開が遅いことと相まって、感染者数ゼロという称賛すべきだがほぼ不可能に近い要求が、市場再開に際して各国・地域の当局を極めて慎重な姿勢にする結果を招いた。欧州や北米では他の一般的な疾病やウイルスとの共存と同様に、新型コロナ感染症と共存する方法を学ぶ必要があるとの認識が広く受け入れられている」と指摘する。

 シンガポールや台湾などこれまで感染抑制に成功していた国や地域で最近、感染が拡大し、マレーシアは感染者急増を受け、今月1日から2週間のロックダウン(都市封鎖)を実施。アジア地域における海外旅行の復活は一段と遅れている。

 域内で人気のビーチや文化的地域に向かうフライトは依然として新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前の水準をはるかに下回り、中には今年に入ってから一段と減少している例もある。

 香港発バンコク便は2年前からおよそ85%減少した。英航空分析会社シリウムのデータによれば、シンガポール発タイのプーケット島に向かう便は、皆無だった年初から持ち直してきたとはいえ、減少率はさらに大きい。インドネシアのバリ島は引き続き外国人の入国を停止しており、同島に向かう便は低調だ。

 アジア太平洋航空協会(AAPA)のスバース・メノン事務局長は5月31日、「ワクチンの接種ペースが相対的に遅く、旅行、観光部門を中心に地域の経済回復が損なわれたままの状態だ」と認める。

 空港で大規模混乱も

 アジアの観光業が失速する半面、欧州などで規制は緩和されつつある。欧州の旅客数は5月の4700万人から8月には1億2500万人とほぼ3倍に増える見込みだ。ただ、こうした旅客数増加の管理が「前例のない運用上の課題」をもたらすと、国際空港評議会(ACI)の欧州支部が5月31日に牽制(けんせい)。その理由として、旅客間に物理的距離をとる措置でスペースが制約されることや、旅客の処理時間が長引くこと、新型コロナ感染症検査を複数回行うことなどが挙がる。

 同支部のオリビエ・ヤンコベック事務局長は、「サービス再開を計画するにあたり、不確実性と複雑さはともに、現時点で度肝を抜かれる水準にある。日を追うごとに、旅行客が今夏、空港で大規模な混乱に耐えることになる可能性は一段と現実味を帯びてきている」と語る。(ブルームバーグ Kyunghee Park、Siddharth Philip)

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