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「はたらく細胞」世界配信へ MANGAで進む新型コロナ対策

 新型コロナウイルスの感染爆発が収束していないインドなど世界に向けて、感染のメカニズムや3密回避といった予防策を分かりやすく伝えようと、日本の人気漫画をインターネットで配信する試みが始まる。細胞を擬人化したキャラクターが体内で奮闘する様子を描いた「はたらく細胞」の出版元の講談社と厚生労働省の共同企画で、JICA(国際協力機構)の支援でヒンディー語と英語に翻訳。音声や効果音が入った「ムービングコミック」として、今月、無料配信される。

 目や鼻、口の粘膜から侵入し、細胞に次々に感染していく新型コロナウイルスを、白血球ら免疫細胞が迎え撃つ-。2月、「新型コロナウイルス編」を収録した最終巻の6巻が発売された「はたらく細胞」。シリーズ累計で500万部を超え、アニメ化もされた。

 小学生から20代の人気が高く、親子で楽しむファンも多い。細胞や細菌の見た目や機能を反映させたキャラクターと、ケガや病気になった体内で細胞たちが繰り広げるスピード感あるバトルや、軽快なギャグが幅広い支持を集めている。

 同作について昨年10月、厚労省にインドと世界向け配信の企画を持ちかけたのが、講談社で漫画などの版権を扱う国際ライツ事業部担当部長の古賀義章さん(56)。「インドではスラム街で暮らす貧困層も多く、マスクや手洗いの習慣もない。『はたらく細胞』なら、効果的に感染予防対策を広められる」と考えた。

 大学時代に4カ月かけてインド各地を回り、地域ごとに異なる人種や言語、文化の多様性に魅了されたという古賀さん。「インドに仕事で戻りたい」との夢を持ち続け、講談社では世界の話題を伝える雑誌「クーリエ・ジャポン」を創刊。その後インドに赴任し、アニメ「巨人の星」のインド版リメーク作品を企画、チーフ・プロデューサーとして日印共同制作に携わった。

 「日本の漫画でインドの社会課題の解決に貢献したい」と、帰国後も出張を重ねて差別や貧困が深刻な女性の自立をテーマにインドでの事業展開を目指していた。ところが昨年、コロナ禍で渡印ができなくなり、同年9月には、インドに住む友人の父がコロナで亡くなった。

 「コロナは身近な脅威になった。現地に行けなくても漫画で何かできないか」。そうした思いが企画の原動力だった。コロナの感染防止を説明するのにうってつけだったのが、発売当初から人気だった「はたらく細胞」。日本や世界が直面するコロナを取り上げたいとの思いは、著者や編集部とも一致し、厚労省への感染予防対策の取材と同時に、ムービングコミック配信を提案した。厚労省も日本語版に加え、2カ国語で国内在住の外国人にもコロナへの理解が広がると期待し、快諾したという。

 無料配信されるのは、「新型コロナウイルス編」と描き下ろしの「感染予防編」の2作品。漫画にヒンディー語と英語の音声や効果音を付け、感染の仕組みのほか、3密回避や手洗いといった日本の予防策を紹介する。作品は国立国際医療研究センターの忽那(くつな)賢志医師が医療監修した。

 世界配信に先駆け、4月末から日本語版を動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開すると、再生回数は計130万回を突破。古賀さんは「体の中で何が起きているのか、難しいことが漫画で分かる。多くの人に気軽に見てほしい」とし、「はたらく細胞」著者の清水茜さんも「このコロナ禍で免疫細胞、ウイルス、感染の仕組みなどを漫画によって分かりやすく伝え、正しい知識の浸透に役立てれば」とコメントしている。(石川有紀)

 はたらく細胞 漫画家の清水茜さんが平成27年3月、漫画雑誌「月刊少年シリウス」で連載開始。シリーズ累計500万部を突破した。漫画は世界16カ国・地域で出版、アニメは動画配信サービスなどで約130カ国で視聴されている。

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