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廃石から銅を回収、米新興の技術開発で供給不足緩和に期待 投資マネー大量流入

 鉱山各社は、世界的な脱炭素化の動きが加速し、電気自動車(EV)などに使われる銅の需要が拡大していることに対応し、純度が低いため処分していた“廃石”の活用に乗り出している。従来法で処理できずに廃石に残留した銅の量は過去10年間で約4300万トンに上る。これらの銅を回収する新技術により、価格が過去最高値を記録した銅の供給不足を緩和できる可能性がある。

 米新興企業ジェティ・リソーシズ(コロラド州ボールダー)は廃石から銅を回収する技術を開発したと語った。英調査会社CRUグループによると、廃石中に残留した銅は2050年までに5倍以上に増加する見通しだ。これは鉱山からの銅供給量の10年分以上に相当し、現在の価格水準で2兆4000億ドル(約263兆円)の価値がある。

 投資マネー大量流入

 ジェティのマイク・アウトウィン最高経営責任者(CEO)は「当社の技術は廃棄された資源を活用し、利用可能な備蓄に変換するために重要だ。こうした技術は今まで“聖杯”(究極の目標)と呼ばれていた」と話す。

 各国の景気刺激策が銅の需要を押し上げ、グリーンエネルギー向けの消費に供給が追い付かないとの長期的な見通しが浮上する中、投資家は大量の資金を銅につぎ込んでいる。新規鉱床の開発がほとんど進んでいない現状下で、世界最大の銅取引業者トラフィグラ・グループや米ゴールドマン・サックスは銅価格が数年以内に1トン=1万5000ドルに達すると予想している。

 ジェティは同社の技術の活用について世界最大級の鉱山各社と交渉中だという。同社の取締役会には英豪資源大手BHPの元CEOであるチップ・グッドイヤー氏のほか、スイス同業グレンコア・エクストラータの元最高財務責任者(CFO)、英アングロ・アメリカンと英豪リオ・ティントの元銅担当責任者などが名を連ねる。

 今回ジェティが開発したのは低品位の黄銅鉱(金属含有率1%未満)から化学結合の切断により銅を抽出する触媒だ。従来の浸出法では浸出過程で黄銅鉱の表面に発生する膜が銅の抽出を妨害する問題があった。同社によると、新技術は既存プラントに導入することができ、20~100%の生産量増加が見込める。

 同社は昨年、カナダの採掘会社キャップストーン・マイニングが運営する米アリゾナ州の鉱山に初の商業プラントを設置した。キャップストーンは数百万トンの廃石の処理を通じ、今後20年間で16億ドル規模の銅の追加生産を目指す考えだ。

 目的はギャップ低減

 ジェティはあらゆる段階にある23のパイプライン(候補案件)を抱えており、一部プロジェクトは今後1年余りで商用化へ移行する見通し。これらプロジェクトは25年までに世界の銅供給に大きな影響を与え始める可能性がある。

 廃石中の銅を処理することで既存の鉱山寿命を延ばすことができるほか、新規プロジェクトで初めから低品位鉱石を処理することも可能になる。ただ、同技術は近年のシェールやニッケルの関連技術のような生産革命をもたらすわけではなく、あくまで需給ギャップを低減させることを目的としている。

 アウトウィン氏は「私たちは大量の廃石から銅を回収するが、短期間での量産で業界を圧迫したり、劇的なコスト削減を実施したりするつもりはない」と語った。(ブルームバーグ Thomas Biesheuvel、Mark Burton)

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