高論卓説

危機意識欠け意思決定に膨大な時間、コロナワクチンが暴いた日本の実力

 新型コロナウイルスのワクチン接種が遅れている。今月14日時点で、日本でワクチンを1回以上摂取した人の割合は100人当たり16.93人(出典Our World in Data)。世界19位で中国や韓国より下だ。図らずも日本の現在の国力を暴露された格好だ。

 海外では日本よりはるかに多い数の犠牲者も出ているから、コロナ禍を有事と捉え臨戦態勢だ。海外と日本の「緊急事態」という認識に大きな温度差があることが明らかになった。ワクチンの到着時期・数量、接種対象者数、医療従事者数、必要なサポートスタッフ数などは昨年から分かっていたし、準備する時間も十分にあった。

 だが、予約段階でパニックが起きるほどの混乱が起きた。なぜ最初から自衛隊の力を借りたり、東京、大阪や他の大都市に大規模摂取センターを用意したりできなかったのか。まして、どうしても五輪・パラリンピックを開催しようというなら、ありとあらゆる手段を駆使して、ワクチン接種をどの国よりも早く終わらせ、安全安心を担保して世界に大きなメッセージを送るべきでなかったのか。

 日常的に患者に注射を打っている歯科医師にワクチン注射を許さない「現行法」とは何だったのか。現行法は直ちに撤廃すべきである。

 今回のドタバタは、危機意識の欠如と意思決定に膨大な時間がかかる日本のシステムが原因である。欠如していたのは「非常時」への意識と対応だ。非常時には常識や合意を無視してもスピード感ある緊急事態に沿った意思決定が必要である。

 コロナ禍は「生物兵器」との戦争である、だから勝利するにはワクチンしかない、と悟った各国のリーダーたちの行動は早かった。

 各国は緊急事態宣言に勝る臨戦態勢を敷いた。バイデン米大統領は就任前の昨年12月にいち早く摂取を受けた。

 まず総司令官の防御を固める。戦争だから当然の作戦である。日本では地方の首長が先にワクチンを接種して非難された。

 菅義偉首相のワクチン接種は3月16日だった。日米首脳会談の渡米のためと発表された。東京都の小池百合子知事は6月5日だった。日本では緊急時においても、作戦本部の大将を守るという戦争の常識より、「まず国民から」という薄っぺらな美徳が重視される。

 英王室は1月9日にエリザベス女王がワクチン接種を受けたことを発表、女王は「ちっとも痛くなかった」と国民にワクチン接種をアピールした。

 一方、上皇さまと上皇后さまが接種されたのは6月1日だった。さらには天皇、皇后両陛下のワクチン接種については、両陛下の「国民と同じように」というお言葉を尊重して宮内庁がまだ「検討」しているそうだ。

 国内ワクチンの開発がなぜ間に合わなかったかも大いに問題にすべきである。数社の製薬会社の開発が治験段階まできていたと報道されたが、現在でも実用化には至っていない。

 有事でも平時でも仕事のやり方を変えられない。こちらの病気の方がずっと重症である。今回のコロナ禍でわれわれは何を学んだのか。日本は再度世界のリーダー国の一員として復活するのか。それとも、このまま中流国として、第2グループでのんびり生きていくのか。全てはわれわれ次第だ。

【プロフィル】平松庚三(ひらまつ・こうぞう) 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長。他にも各種企業の社外取締役など。北海道出身。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus