高付加価値・低コストマンション建設の進和建設工業(堺市北区)は、自社ノウハウで地域社会を活性化させ、魅力ある街づくりによってマンション価値を高める土地活用事業に乗り出した。新型コロナウイルス収束後も成長できる土台を築くのが狙いだ。
三方よしの経営
約600物件の実績を持つ賃貸マンションではデザイン性を重視。安心して住むことができ、子育てにも優しい「働く女性専用マンション」や、化学物質を使わず自然素材にこだわった「無添加マンション」などを開発。またメーカーや海外から部材を直接購入したり、設計の標準化などに取り組んだりして安価でもグレードの高いマンションを展開してきた。
しかし賃貸市場は少子高齢化により空室率は約20%と高く、今後も供給過剰が見込まれる。解決策として打ち出したのがマンションのオーナー、入居者が喜び、同社も満足する「三方よしの経営」だ。空室問題の解決とマンションの資産価値を高めるためには人が集まる魅力ある地域づくりが必要と考え、マンションを核に地域を丸ごと活性化する新たなサービスに乗り出した。
大阪市中央区、堺市の伝統ある旧市街地と同社本社など4カ所で実験的な取り組みを開始した。
住民同士の交流形成
マンションは隣同士の交流が少なく、どんな人が住んでいるか分からない場合が多い。そこで手始めに大阪市中央区の自社保有マンションで、住民同士のコミュニティーが形成できるようにイベントを定期的に開始。また屋上を予約制でキャンプやパーティーができるグランピングスペースとして開放している。
本社では毎月2回、各業界の第一線で活躍している専門家を招いて楽しく学べる「市民大学(Terakoya)」を開催している。コロナ禍対応として対人接触を避けるため宅配が増えていることから宅配ボックスも設置していく。
同社はサービス付き高齢者向けマンションも多く手がけ、訪問介護、デイサービス事業なども運営する。このノウハウを生かして既存のマンションに新しいサービスを導入、地域に応じた介護サービスやシニア向けマンションも提供。子育てにも便利なシェアハウスなども展開する。
商業活動が低調な地域では、マンションの1階部分を店舗にして、人気の飲食店やユニークな物販店を誘致し、新しい流入人口の創出も考えている。
西田芳明社長は「コロナ禍でも地域やマンションに新しい魅力を付け加えていきたい」と意気込む。「人が集まれば、街は必ずよくなる」という信念からだ。
住みたいマンションから住みたい街へと変えていくことで、空室が少なくなりオーナーの収入が安定する。安心して住める住環境と地域活性化が進めば住民にとってマンションの資産価値が上がる。両者に支持されれば同社の経営も上向く。三方よし経営を貫くことで企業価値を高めていく方針だ。