ハザードマップ

九州電通/TRASTA

 ■水晶デバイス、スポンサー探しにめど

 ▼九州電通 九州電通と関連で不動産管理会社のハイテックは6月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

 九州電通は設立以来、水晶デバイスの開発製造を手掛けていたが、市場の競争激化などの外的環境の変化、1990年代以降の海外生産拠点への投資、ウエハー事業などの新規事業の失敗などで財務面が悪化。2018年から長崎県中小企業再生支援協議会の関与の下、再建を目指すため、スポンサーを探していた。

 風評リスクを考慮し取引先や事業再生ファンドを中心に打診・交渉を継続していたが、米中貿易摩擦の影響による経営環境の悪化もありスポンサー探しは難航していた。

 こうしたなか、債権者のリサ企業再生債権回収と半蔵門キャピタルインベストメンツから21年3月、長崎地裁に破産手続を申し立てられたが、スポンサー支援を前提とした再生計画を立案する準備が整ったため、今回の申請に至った。

 ▼TRASTA TRASTAは6月2日、東京地裁から破産開始決定を受けた。

 インターアクションの子会社としてBIJの商号で設立された。当初は太陽光発電事業などを手掛けていたが、経費負担などから赤字決算が続いていた。

 2017年2月にインターアクションとの資本関係が解消され、太陽光発電事業から撤退。ホテル経営の収益改善のためのコンサルティングや、ホテル開発のための不動産コンサルティングへ業態を転換した。

 その後は収益効果シミュレーションなどを行えるサービス「RevNavi」の展開のほか、訪日客向けホテルの運営にも乗り出していたが、新サービスへの経費などから19年5月期には売上高約4億3000万円に対し、7億4548万円の赤字を計上した。

 20年には新型コロナウイルス感染拡大により、訪日客が激減するなど厳しい業況が続くなか、一部債権者から破産を申し立てられ今回の措置となった。

【会社概要】九州電通

 ▽本社=長崎県大村市

 ▽設立=1973年6月

 ▽資本金=7040万円

 ▽負債額=約34億5600万円 (関連会社分含む)

【会社概要】TRASTA

 ▽本社=東京都渋谷区

 ▽設立=2005年6月

 ▽資本金=1000万円

 ▽負債額=22億1948万円 (2019年5月期決算時点)

 〈チェックポイント〉

 九州電通は債権者破産を申し立てられたが、スポンサー支援のめどが立ったことで自ら民事再生法を申請した。経緯は複雑だが、今後焦点となるのは破産した場合より債権者にとって有利な再建計画を作れるかどうかだ。債権者の協力が不可欠だけに、明確な再生スキームの提示と調整力が必要になってくる。

 TRASTAは先進技術を駆使したスマートホテルの運営で定評があったが、コロナ禍以前から初期投資で損失がかさんでいた。年々成長を続けてきた訪日客の利用に特化し、投資回収に期待を寄せていたが、コロナ禍で事業環境が一転。訪日客需要への傾注が、破綻を早める結果につながったのかもしれない。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)

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