テクノロジー

水素技術開発、官民で本腰 「脱炭素の鍵」覇権争い激化

 2050年の脱炭素社会実現に向け、政府や企業が燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素の本格活用に向けた動きを加速させている。車や船、発電の燃料として有望視されるが、コスト削減や安定調達など課題は多い。脱炭素の鍵を握る水素の技術開発は国際競争が激しく、日本は官民連携で主導権を狙う。

 政府は月内に決定する成長戦略で、30年までに水素ステーションを現在の約160基から1000基まで増設する方針を示す。菅義偉首相は、35年までに新車販売は全て電動車にするとの目標を掲げており、普及で課題とされる補給拠点の大幅拡充など政策面で後押しする。

 企業も技術開発に全力を挙げる。トヨタ自動車は5月、24時間耐久レースで水素エンジン車を完走させた。水素と酸素の化学反応で生じる電気でモーターを回す燃料電池車とは違い、水素エンジン車は水素を直接燃やして動力源にする。燃費性能に課題は残るが、ガソリン車の部品を多く流用できるためコスト抑制や雇用維持につながる強みがあり、トヨタは市販に向け開発に注力する。

 岩谷産業は液化水素や水素ガスの製造、輸送を手掛ける。25年大阪・関西万博では、会場と大阪市内を結ぶ水素ガス燃料の旅客船の実現を目指す。水素の運搬船を開発した川崎重工業は、25年に全長約300メートルの大型船を建造し、液化水素の供給網構築を狙う。

 電力業界は水素などを活用し、依存度が高い火力発電の脱炭素化を掲げる。ただ政府調査会で示された試算では、50年に見込まれる総電力量の1%を国内製造で賄うには福島県にある世界最大級の製造拠点が約2500~5000カ所必要といい、海外からの安価で安定した調達体制も不可欠だ。

 水素技術は中国や韓国、欧州も開発に力を入れる。佐々木一成九州大副学長(水素エネルギー研究)は「脱炭素の根本的解決には水素が必要だと各国が気付き大競争が始まった」とし、「製造や産業への活用法で日本ならではの技術を育てなければならない」と話す。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus