リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

家族と社員への愛情は同じ、潜在意識発掘重視 東洋合成工業・木村有仁社長(2-2)

 家族と社員への愛情は同じ 潜在意識発掘重視

 --創業者の父親について

 「父は1929年生まれで、戦前の日本の文化や考え方を肌で知る世代だ。しかし第二次世界大戦がもたらしたパラダイムシフトで価値観が激変。結核を患ったこともあって、人生のはかなさを知り『どう生きるべきか』を常に考えてきた。そうして培われた価値観がやがて揺るぎないものへと変わった父の背中を見て育った。父と『よく生きる』生き方、未来の社会、哲学、宗教などについてよく議論した。こうして学んだことを自分の子供たちにも伝えていきたい。そのためには一緒に過ごすことが大事であり、自分の真摯(しんし)な背中を見せることが大切だ」

 --会社に対する接し方も同じなのか

 「家族への責任と愛情と同じくらいの思いで接している。父親と社長の明確な切り分けはない。いかに個人の潜在能力を引き出し、自己実現を図れるかを考えている。会社の方が対象人数は多いが、そのためにビジョンを共に創り、サポート体制を充実させ、常に相手の立場に立って成長を支える。個人と会社の成長をつなげるためにどうすべきかを24時間考えている」

 「コロナによる感染防止策として在宅勤務などをいち早く取り入れたが、長くなりすぎて孤立に悩む若者が出てきた。そこでインターフェース(接点)の時間を設けたりしている。一方で、豊かな時代のコロナ禍は人間を正直にいられる時代に変える。リモートワークなどの働き方改革がパワハラ、セクハラをなくし多様性を認める方向に向かうからで、個人の感覚が尊重され社会が正常化するのではないだろうか」

 --休日は

 「家での過ごし方は父が手本になっている。料理がうまく朝昼晩の食事と弁当を作り、子供の面倒も見ていた。私には子供が3人いるが、子育ては大変。私自身のワークライフバランスがうまく取れているか分からないが、私も家事と育児への参加を当たり前にしている。料理を作り、洗濯も好きだ。工場の生産性向上と同じで整理整頓、時間管理さえしっかりすれば炊事洗濯も早くできる」

 --家事以外の過ごし方や趣味は

 「子育ても趣味かもしれない。中学生時代から陸上部に入り長距離走を得意としてきたので、山登りやランニングなども好きだ。先日も子供と一緒に自宅近くを15キロ走った。年齢的に体力が落ちたので、最近は子供の方が速い。また、やったことがないことにチャレンジしたり、カルチャーショックを受けたりすることも楽しんでいる。悩んだときが成長・吸収のタイミングと考えているから、マインドフルネスとそのための瞑想(めいそう)にも凝っている」

 --好きな言葉や思いは

 「人はフェアであるべきで、人を選んだり、可能性をつぶしたりするのは嫌いだ。というのは、人は一人では何もできないのに、人の可能性を信じないのはおかしいと考えるからだ。『あの人は駄目』と決めつける人を見かけることも少なくないが、本当にそうなのだろうか。そうであってもその理由が分かれば解決できるはずだ」

 「高校時代に反骨精神から自尊心を強くするチームを作ったことがある。そのときのスピリットが功を奏して、今や各界で名をはせる仲間が多数いる。人の可能性を信じ、やり遂げた達成感、充実感を共有することが大切だ。この経験から『有言実行』を座右の銘にしている。『努力は人を裏切らない』『背景を学ぶ』も好きな言葉だ」

 

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