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老舗ワタベ再建への道遠く コロナ大逆風の婚礼業界

 新型コロナウイルスの感染拡大で経営不振に陥っている婚礼大手のワタベウェディングは、上場廃止して医薬品製造などを手がける興和(名古屋市)の完全子会社となって再建を目指す。当面の資金繰りは一服したが、コロナの収束が見通せず、少子化の影響もあり婚礼業界には依然逆風が吹く。ホテル雅叙園東京やメルパルクなどを運営する老舗の再建に向けた視界は開けていない。

 興和傘下入りで一息

 5月28日、メルパルク京都(京都市)で開かれたワタベの臨時株主総会。開会前にある男性株主が「海外だけでなく、国内挙式にも力を入れるべきだった」と話すなど混乱も予想されたが、「コロナ禍の経営状況を確認する質問が1問程度あったのみ」(関係者)で約1時間で終了した。

 肩透かしに終わった総会とは別に、承認された興和の傘下入りを軸とする事業再生計画が成立するまで、ワタベの経営はコロナに翻弄され続けた。

 ワタベは1973年に米ハワイに支店を開設。海外リゾート婚を国内に広げた。その後も海外拠点を整備する一方、東京・目黒のホテル雅叙園東京の運営会社を子会社化し、郵政民営化後にホテル運営のメルパルク事業を引き継ぐなど、海外挙式と国内挙式を2本柱として事業を拡大してきた。

 だが、コロナ禍で相次ぐ挙式の中止や延期が業績を直撃する。特にハワイ挙式はリゾート婚のうち組数ベースで約6割を占める稼ぎ頭だっただけに、海外への渡航制限がかかる状況が続いたことは大きな打撃となった。2020年12月期連結決算は最終損益が117億円の赤字。債務超過は20年12月末時点で8億円で、21年3月末時点では64億円まで膨らんだ。

 店舗閉鎖や希望退職募集を進めながら昨年11月からスポンサー探しに着手し、21社に支援を打診するも難航。さらに検討依頼先の企業を広げたが、緊急事態宣言の再発令などで「昨年末まで複数社が前向きだったが、ハワイ挙式ができなくなり次々と候補が下りてしまった」(ワタベ関係者)。そうした中で手を挙げたのが興和だった。

 興和といえば「バンテリン」や「キャベジン」などの医薬品で知られるが、グループとしてホテル事業も行っている。地元名古屋で老舗ホテルの運営などを手がけるほか、19年にはハワイで高級ホテルを開業した。興和側は子会社化の狙いについて沈黙を貫くが、ワタベのノウハウを取り込むことで、ホテル事業との相乗効果を図る思惑があるとみられる。

 事業再生計画は早期成立を目指し、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)という手法が取られた。焦点はメインバンクの三菱UFJ銀行や準メインの京都銀行など6社が、約185億円の債権のうち半分に相当する約90億円の放棄に応じるかどうかだった。金融機関にとっては返済免除という厳しい条件だが、関係者によると「興和がスポンサー支援するにあたり、借入金の相当額を免除してほしいと要望した」という。全社が同意しなければ成立しない状況で、複数の銀行関係者が「難しい判断だった」と明かす。スポンサー候補が興和以外になかっただけに、早期再建に向けた苦渋の選択だった。ワタベは興和からも20億円の資金を調達し、資金繰りに一息つけることになった。

 他業種連携加速か

 ただ、婚礼業界の逆風は今後も続く。日本ブライダル文化振興協会の推計では、業界全体の市場規模は約1兆4000億円で、20年度は9500億円の損失があったという。21年度前半もコロナ前の水準には戻り切らない見通しだ。

 そもそも業界は大型施設の維持費や多くの人件費を抱える産業構造で、近年は少子化や結婚自体の減少で市場自体が縮小傾向だ。経済産業省の統計では、「令和婚」の需要があった19年を別にすれば、売上高、件数ともに下落傾向が続く。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子(かなこ)・人口動態シニアリサーチャーは「コロナがなくても業界の苦境は予想されていた」と指摘する。

 老後に備える親世代からの資金援助も少なくなり、若い世代の間では控えめな「ジミ婚」や入籍だけの「ナシ婚」が広がる。このため、コロナ収束後に挙式数が回復しても一時的とみる。天野氏は、結婚後も飲食やレジャーの商機をとらえることを狙って婚礼業界の他業種との連携加速を予測する。

 ワタベの経営再建は、産業構造に加え、コロナという分厚い雲がいつ晴れるかに大きく左右されそうだ。(岡本祐大、田村慶子)

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