政府が18日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」は、新型コロナウイルス感染症の収束後を見据え、デジタル化や脱炭素化など企業に大胆な変革を促す内容となった。新型コロナは社会生活を大きく変えただけでなく、硬直的とされた日本企業にも変化をもたらし始めている。企業にとっては新たな設備投資など負担も伴うが、経済再浮上の好機ととらえ、コロナ禍で芽生えた変革の機運を加速させられるかが問われそうだ。
6月にオープンしたばかりの「イオンモール川口」。3階のイオンスタイルのベビーカー売り場で商品を見ていると、ほどなくして店員が駆けつけてくる。イオンリテールが初めて本格導入した「AI(人工知能)カメラ」が、店員の端末に買い物客の存在を通知したからだ。
客が2分以上、商品の前に立ち止まると通知が行く仕組みで、買い物客にとっては店員を探す必要がなく、店員にとっても客がいないときは接客以外の仕事に集中できる利点がある。
小売業のデジタル化というと、ネット通販という発想に行きがちだが、担当者は「デジタルを活用することでリアルの店舗もまだ改善の余地がある」と語る。
生産性向上にデジタル化は不可欠。骨太方針には税制での支援なども盛り込まれたが、中小企業を含めた経済全体の取り組みに広げられるかが課題だ。
デジタル化と並んで骨太方針の柱に位置付けられるのが脱炭素化の取り組みだ。再生可能エネルギーへのシフトなど電力部門の脱炭素化はもちろん、2050(令和32)年の脱炭素目標の実現には供給側の取り組みも欠かせない。
二酸化炭素(CO2)排出量が国内製造業の約4割を占める鉄鋼業界は、水素を使った製鉄の研究を進める。設備の切り替えには莫大(ばくだい)なコストが予想されるが、今後は環境負荷が少ない鋼材ほど高く売れるとみられており、日本の技術力が試される分野だ。
米中対立が激化する中、経済安全保障の観点からもサプライチェーン(供給網)の強化は喫緊の課題だ。新型コロナでは調達や物流面の課題が指摘され、今も半導体不足が自動車をはじめとした幅広い業界に影を落としている。
経済の底上げには最低賃金の引き上げも重要だ。ただ、パートやアルバイトを多く抱える飲食や流通業界は新型コロナの影響も色濃く、ある関係者は「このタイミングで賃金の引き上げといわれても正直厳しい」と話している。