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株主総会佳境 「環境」へ厳しい視線、NGOが定款変更議案

 ピークを迎えている3月期決算企業の株主総会で、気候変動対策の強化を求める株主提案が相次いでいる。環境保護団体や物言う株主(アクティビスト)が、住友商事や三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対策強化に向けた定款変更を要求。各社は議案に反対する一方で環境重視のアピールに努めているが、株主の目線が厳しくなる中、予想以上の賛同を得る可能性もある。

 「気候変動がもたらす財務リスクに(会社が)直面するのを避けるためにも、世界全体で取り組みを加速させなければならない」

 住友商事が18日に東京都内で開いた株主総会。豪州に拠点を置く環境非政府組織(NGO)、マーケット・フォースの代理人は、気候変動対策の必要性を訴えた。

 同NGOは、地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」に沿った事業計画の策定や開示を行うよう、定款の一部変更を提案。住商がバングラデシュで建設工事を請け負っている石炭火力発電所の拡張計画も問題視した。

 会社側は「気候変動緩和を重要社会課題の1つと位置づけている」(兵頭誠之社長)と強調する一方で、議案には「定款は会社の組織等に関する基本的な事項を定めたもの」であることなどを理由に反対。賛成割合は20%と、可決に必要な3分の2以上には遠く及ばなかった。

 ただ今回、議決権行使助言会社2社のうち1社が賛成を推奨。住商が総会直前に2040年代後半に石炭火力発電から撤退する方針を打ち出すなど、一定の「配慮」をみせた中での20%獲得は、健闘とみなすこともできる。

 マーケット・フォースは29日に総会を予定するMUFGに対しても、特定非営利活動法人(NPO)の気候ネットワークなどと定款変更を求めている。気候変動の株主提案は昨年のみずほフィナンシャル・グループが国内初で、MUFGへの提案は金融機関では2年連続となる。MUFGも議案に反対する一方、50年までに投融資先を含む温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると直前に宣言したが、賛成が約34%に達した昨年のみずほを上回るかが焦点となりそうだ。

 気候変動をめぐっては、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも25日に総会を開く東洋製罐グループホールディングスに対応強化を求めている。

 日本以上に株主が圧力を強める欧米では、総会で企業に気候変動の取り組み強化を迫るキャンペーン「セイ・オン・クライメート」が昨年から拡大。米石油大手エクソンモービルが5月に開いた総会では、取締役12人中3人を物言う株主が推す「環境派」の人物が占めた。今後は重要事業を手掛けていても、二酸化炭素(CO2)排出量が多かったり、削減に消極的とみなされるだけで「標的」にされかねない。(井田通人)

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