リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

36年一筋、達成感と充実感味わえる天職 広報駆け込み寺・三隅説夫代表(2-2)

 36年一筋 達成感と充実感味わえる天職

 --広報に関わった当時を振り返ると

 「高知支社長から広報室に異動したのが1984年。それ以来ずっと携わっており、大学を卒業してからの現役生活58年のうち36年が広報。まさに広報一筋、天職といえる。当時の社長から『長くやってくれ。数年後に広報の時代が来るから』といわれた。まさにその通りとなった。ただ広報室長に就いたとき、社内的に広報の地位は低く部下は3人しかいなかった。高知支社の業績は好調だったので『なぜ、私が』という感じで、周りからは『左遷』といわれた」

 「広報機能が未成熟だったので、記者との付き合い方などについて、相談したくても相談できる人が社内にも業界にもいなくてもんもんとしていた。そのときに手を差し伸べてくれたのが(銀行や保険会社などを担当する)日銀記者クラブにいた記者たちで、マスコミとのネットワークづくりが重要などと教わった。これを受けて『飲みニケーション』に明け暮れ、多くの記者と知り合いになり、安田生命保険(当時)広報の基盤ができた。96年には取締役広報部長になったが、保険業界で最初だった」

 --広報駆け込み寺設立のきっかけは

 「法律は弁護士、税務は税理士など相談相手がいるが、広報の分野には誰もいない。しかし企業の不祥事などが相次ぐ。一方で社会貢献などが重視されるようになり、それだけ広報対応がますます重要になってくる。そのためにも相談に乗ってくれる場所をつくる必要があると考えた」

 「広報活動の質的向上を図るという目的が分かるNPO法人の名称をどうするか思案していたとき、通勤などで利用していた私鉄の駅で電車を待っていると『閉まる扉に駆け込まないでください』というアナウンスが耳に入った。『うちには駆け込んでほしい』との思いから変な名前だが、下に『寺』をつけてNPO法人を立ち上げた。だから『代表』というより『住職』のほうが似合うのでは」

 --広報の仕事が天職とは

 「こんなに奥の深い仕事はない。人と会うのが元々好きだったが、企業・組織のトップやマスコミ人と会って貴重な話を聞けて、知識も身につく。達成感と充実感を味わえる仕事なので続けられる。趣味といえるものはあまりないので、まさに仕事と趣味が一致している。だから天職と思う」

 「普段から心がけていることが3つある。まずは『いつも3割程度の余裕を持つ』。車のハンドルを少し操作しただけではすぐにタイヤの角度が変わらない『ハンドルの遊び』があるように、余裕を持って動くことが大事だ。2つ目は『第三者の目を持つ』で、他の人ならどう行動するかを考える。最後は『本番主義』。自分にとって本番はいつかを知り、そのときに全力投球する。それ以外は好奇心のまま動くことにしている」

 --健康法は

 「鍼灸(しんきゅう)院に20年間通う。毎日曜日の午前中に40分ほど針とか灸をやってもらっている。当初は痛めた腰の治療で通っていたが、それは改善した。今は免疫力が向上するというので体全体をチェックしてもらっている。免疫力は身体的だけでなく、精神的にも高まる。広報は精神的プレッシャーも多いので精神面を含め免疫力を高める必要がある。広報担当者の悩みや相談に乗るのはもちろんだが、広報を通じて企業の健康を守るのも駆け込み寺の役割と考えている」

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