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東電総会、会長人事を承認 「小林体制」企業統治改革進むか

 前三菱ケミカルホールディングス(HD)会長の小林喜光氏が正式に東京電力HDの新会長に就任することが決まり、東電のコーポレートガバナンス(企業統治)の立て直しに向けた「小林新体制」が動き出す。ただ、東日本大震災以降、社外から会長を迎えて進めてきた東電改革は震災から10年がたった今も道半ばで、難しいかじ取りが求められる。

 2011年に発生した東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所事故後、東電は社外から会長を迎えて改革を急いできた。12年から企業再生の知見が豊富な弁護士の下河辺和彦氏、14年から元JFEHD社長の数土文夫氏、17年から日立製作所会長兼社長を務めた川村隆氏が会長職を務めた。数土氏や川村氏の東電改革は、16年の電力自由化における営業力強化が主な課題だったが、小売り事業で苦戦するなど大きな成果を出せなかった。

 小林氏は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の運営委員を務め、東電の経営や原発に精通するほか、経営者としての経験も豊富で改革への期待がかかるが、課題は多い。

 今年3月には、柏崎刈羽原発(新潟県)で所員が同僚のIDカードで中央制御室に不正入室したほか、核物質の防護不備の判明で、原子力規制委員会は事実上の運転禁止命令を出した。

 また、福島第1原発の処理水の海洋放出が決定したが、10年かけて風評被害の払拭に努めてきた農水産業関係者への誠意ある対応が必要で、場合によっては、さらなる風評被害への賠償など、重い課題がのしかかる。

 外部から就任した会長がなかなか成し遂げられなかった「真の東電改革」を小林体制で具現化できるか。厳しい目が注がれる。(那須慎一)

                  ◇

 ■東京電力HDの主な経営課題

 【柏崎刈羽原発】

 ・核物質防護の不備で原子力規制委が事実上の運転禁止命令

 【福島第1原発】

 ・事故に伴う廃炉の進行と賠償対応

 ・処理水の海洋放出方針の地元への説明

 【全般】

 ・廃炉や賠償に必要な費用の捻出を柱とした経営再建計画の改定遅れ

 ・安全や法令順守を最優先に考える企業文化の定着

 ・小売り事業の営業力強化

 ・脱炭素への転換

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