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「砂丘行ったって言うたらアカン」 売上97%減、息絶えたドライブイン (2/2ページ)

 「言ったらアカンよ」

 そして迎えた今年のGW。初日の4月29日は平日と変わらない人出で、観光客はまばら。ようやく5月3日になって店の前の観光道路に渋滞が発生し、120台置ける駐車場も満杯になった。一息つけると思ったときに衝撃的な言葉を聞いた。母親が子供らに向けてこう言っていた。

 「あんたら、『鳥取砂丘に行った』って、他人に言うたらアカンよ」

 近所や知人に知れたら「コロナ禍に旅行はすべきでない」と非難されると心配しての発言だろう。

 旅行には土産が付き物だが、旅行を隠すようでは土産の売り上げは期待できない。実際、「買われた土産は自分の家に持ち帰る程度」と、期待した回復にはほど遠い実績となった。

 持続化給付金や県などの支援制度はほとんどすべて利用したが、「店舗が大きいと、電気も水道も使用量が大きくなる。1カ月に40万円ほどかかる」。観光需要の回復が見通せない中、5月末での閉店を決めた。

 全国のドライブインなどが加盟する日本観光施設協会によると、約130の会員施設の中で数施設がこの1年で閉店したという。

 同協会事務局長の石田光二(みつじ)さんは「団体観光バス受け入れがメインの施設は、どうしたらよいのか分からない状態。国の『Go Toトラベル』の再開を期待している」と話していた。

 山根さんは、閉店に至った軌跡を振り返り「何十年に1回はコロナのような事態が発生するだろう。有効な策は思い浮かばないが、観光産業従事者へのPCR検査や優先的なワクチン接種で『安心・安全』を前面に打ち出し周知することが必要だ」と語る。

 観光一筋に生きてきた山根さん。苦い経験を胸に、再び観光で身を立てるべく業態転換に動き出している。(松田則章)

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