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東京で収穫体験 「練馬のブルーベリー」はなぜ発展したか

 日増しに暑さを感じるこの時期、旬を迎えるのがブルーベリー。近年では都市部での栽培も盛んで、収穫体験ができるところもある。なかでも東京都練馬区は都内最大の生産面積を誇る知られざる産地だ。生産農家を訪ねて、発展の背景とおすすめの食べ方を教えてもらった。(内田優作)

 家族向きフルーツ

 練馬区は古くから「練馬大根」が有名な近郊農業の一大産地だ。大根に限らず、キャベツやトマトなどの生産も盛んだが、近年はブルーベリーづくりの伸びが目覚ましい。

 区都市農業課によると、区内のブルーベリー農園は約30カ所。計約914アール(昨年3月時点)という生産面積は都内最大規模。しかし、近年までブルーベリーを手掛ける農家はほとんどなかった。成長のきっかけとなったのは、平成16年に地元農家によって「ブルーベリー研究会」が発足したことだった。

 同区のブルーベリーづくりのはしりになった同区南大泉の「高橋ベリーガーデン」を訪ねた。同園は2カ所に分かれ、10種類を超えるブルーベリーを栽培する。収穫体験もでき、週末には1日約200人が訪れるという。

 農園主の高橋正悦(まさえつ)さん(70)は16年から栽培を始めた。もともとは大根やキャベツなどの野菜だけを手掛けていたが、生産だけではなく、加工や包装の作業の負担に悩んだ。そこで浮かんだのが果物づくりだ。収穫体験で客に実を摘んでもらえれば労力を減らせる。妻の美枝子さん(65)が農業者向けの講演会で話を聞いてきたブルーベリーに目をつけた。

 「ミカンは気候的に厳しく、ブドウだと子供では背が届かず楽しめない」(正悦さん)。低いところにも実を結ぶブルーベリーは家族向きだと考えた。

 高橋さんは数軒の農家とブルーベリー研究会を結成し、土壌の改良や売り込み方について議論を重ねた。

 慣れないブルーベリーづくりは容易ではなかった。野菜畑に適した土壌を果樹園向けに改良し、木も丹念に剪定(せんてい)して大粒の実を育てた。苦労の末、西武池袋線保谷駅から徒歩圏内という地の利にも恵まれ、19年に収穫体験をスタートさせると活況を呈した。現在は農地の4割をブルーベリーに充てて生産、高橋さんらの取り組みは広がり、ここ15年の間に区内にはブルーベリーを手掛ける農家は急増した。

 冷凍庫で凍らせて

 取れたての実を口にすると、さわやかな酸味とともにみずみずしい甘みが広がる。美枝子さんに、おすすめの食べ方と活用法を尋ねてみた。

 一つは洗ったブルーベリーを一晩冷凍庫に入れ、凍らせるだけ、というもの。「シャーベットのようになって夏は特においしい」という。

 もう一つは特製のジャム。熟れ切る前のブルーベリーに、重量の3割の砂糖をまぶして、強火にかける。「実の水分でジャムができるので、水は加えない」。煮え立ってきたところで弱火と中火の間にして、「少し緩めになったところ」で火を止めて、一晩寝かせれば完成。砂糖以外の添加物はなく、自然で濃厚な風味を楽しめる。

 農園では高橋さん夫婦に加え、薬剤師から転身したおいの高橋洋平さん(37)が後継者として働く。洋平さんが注力するのは写真共有アプリ「インスタグラム」での発信だ。日々の農作業を紹介、手応えを感じている。SNSという新しい息吹を得て、練馬のブルーベリーはさらに盛り上がりそうだ。

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