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ワタミ会長は恨み節…酒事業者に店との取引き自粛要請

 新型コロナウイルス対応の改正特別措置法に基づき東京都に4度目の緊急事態宣言発令が決まった8日、飲食関係者からは悲鳴が上がった。蔓延(まんえん)防止等重点措置下で限定的な酒類提供が認められ、顧客が戻り始めた矢先の宣言再発令。しかも、政府は酒類販売事業者に酒類提供を続ける飲食店との取引を自粛するよう要請するなど、長年の商売相手との関係を崩壊させかねない規制内容だ。宣言は夏休みやお盆の時期にかかり、旅行業界にも打撃だ。

 「人がわんさか街を歩いている。(人流規制を)徹底しなければ、(酒を提供する)われわれだけずっと犠牲になる」

 外食大手ワタミの渡辺美樹会長は8日、東京都板橋区のから揚げ店の開店式典でこう訴えた。ワタミは再発令を受け、都内の居酒屋の休業店舗を現在の36店から70店に拡大する。月4億円の赤字になり、「非常に厳しい」状況が続く。宣言発令の度に“狙い撃ち”される居酒屋経営者の恨み節は続いた。

 政府は今回、酒類販売事業者に酒類提供を続ける飲食店と取引しないように要請した。飲食店は店で提供する酒類を販売事業者などを通じてメーカーから仕入れている。要請に従わない飲食店を流通段階で押さえ込む考えだが、「販売事業者は売り上げの大部分が見込めなくなる」(業界関係者)といい、反発が予想される。

 ただ、飲食店などは一部酒類をスーパーなどで調達することも可能だ。販売事業者を通じた酒類提供禁止の実効性は不透明で、酒の提供自粛は協力金など店への補償次第ともいえそうだ。

 宣言再発令に伴い移動自粛も求められ、夏休みが書き入れ時となる旅行業界への影響も必至だ。日本航空は、国内線で16日~8月16日までの減便を追加で発表した。

 もっとも、全国で宿泊施設を運営する「星野リゾート」(長野県)は、宣言対象が東京都などに限られ、予約キャンセルなどの「大きな変動はない」とみる。宣言の発令や解除が繰り返され「以前と比べて世間の考え方も変わってきている」といい、宣言慣れした旅客が、感染対策をしながら各自で夏を楽しむ光景もみられそうだ。(加藤園子、福田涼太郎)

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